「・・パイプ、のようなもの?」
「ああ。こうすべきだというものが分っている。そこに向かって進もうとする。しかしそれをくみ取る者がいない。下の者はそれを伝えるすべがないんだ」

 声の調子が変わっていた。

「巨大な山にぶち当たって、しかしそれを打開する手立てがない。聞く耳を持たないんだよ、上部の者は。我々臣下ではどうしようもないんだ」

 アーロンは遥か彼方を見つめていた。
「ああ、歯がゆいものだな、下に立つというのは」
 
 うめくような声だった。 
 そして目には射すような光が宿っている。

 シュテルツは息をとめた。
 長年の盟友の知り得ない面を見たような気がした。

「・・うん、そうだな」

 そっとそれだけを返した。