王はそれを拭いながら、
「そうだ、お前にいいものをやろう」
「いいものですと」
 
「『絶対権限』というものだ、これを与えてやろうではないか」
「ぜったいけんげん、ですと」

「そうだ、最近王子と始めた遊びでな」
 と言いかけて、
「いや、王子に序列の上下を教えておっての、上の者が下の者に『権限』を与えるというものだ。下の者はそれを受け取って有り難味をかみしめるのだ」

 アーロンは返事をしない。

 王は顔色を窺うように、
「お前が退職するにあたって、一つだけ望みを叶えてやろうではないか。望むことは何でもいい。お前自身に関することだ、一身上のことであれば望みを叶えるというものだ」