隠しておく必要もないし、どうせ後々バレそうだし。
いっぱい話し聞いてくれて、背中を押してくれた恩人から。
言っておこうかなぁくらいの気持ちで、「あのね」と切り出した。
「昨日からなるちゃんとお試しで付き合うことになった…ので、もうだいじょぶ。心配かけてごめんね」
ぺこり、軽く頭を下げる。
すると、かしゃんっ、コロコロ……お箸が落っこちて転がった。
私のじゃなくて、長谷川くんのほう。
落とした張本人なのに、その手は一切動こうとしない。
銅像のように固まっちゃってる。
「だ、大丈夫…?洗ってきた方がいいんじゃない?それとも…割り箸いる?」
放心状態の長谷川くんに代わって箸を拾い、それと一緒に念の為に持ってる割り箸を渡す。
「あ……あぁ、さんきゅ。ちょっと、洗ってくるわ…」
「う、うん…行ってらっしゃい」
心ここにあらずな長谷川くんを見送って、卵焼きを口に入れる。
…あんなに動揺してる長谷川くん、初めて見た。
そんなにショックだったのかな、箸落としたの。
洗えばなんとかなる気がするけど…もしかして、潔癖なのかな。



