姉の婚約者はワルイ男




「ここはどこですか?」


着いた先はまさかの場所で、予想はついたものの、一応確認をしたかった。


「俺のマンションだけど」

「……やっぱり」


気づいていて聞いたことがわかったのか、この男は楽しそうに声を弾ませている。

どうしてこの男は自分の家にわたしを連れてきたんだ。


ここは姉とよく会っている場所なんでしょう?

先日姉から聞いた内容が頭でリピートされて離れない。


「あと、松葉さん。手を離してください」

「だって、離したら、キミ逃げるでしょ」

「逃げませんよ、帰り方わかりませんから」

「あ、そっか。キミ、方向音痴だっけね」


どうしてこの男はそんなことも知っているんだ。

それに、逃げないと言っているのに、一向に離してくれる気配がない。

そのままわたしはずっと右手をつかまれたままだった。