「柚葉ちゃん、乗って」
いつの間にか通話が切れていて、嫌な予感の通り車に乗って表れたのはあの男だった。
松葉さんはこの前映画館で会ったようなTシャツにジーパンとラフな格好をしていた。
「イヤです。乗りません」
「いいから乗って。早く」
「乗って」「乗りません」の言い合いがしばらく続いたけれど、このままでは強制的に連行されることが予想され、しぶしぶ助手席へ。
この男には振り回されてばかりだ。
「いったい何なんですか、松葉さん」
「ちょっといいものが手に入ったからね。キミにあげようと思って」
「……なんですか、プレゼントって怖いんですけど」
「ひどいなー、柚葉ちゃん。そんなんじゃないよ」
プレゼントを持ってきてくれたことも謎だけれど、そのためにわざわざ車でわたしを探しに?
よっぽど急なプレゼントなのだろうか。
賞味期限が迫っているものとか……
「そもそもどうしてわたしの番号知ってるんですか?」
「あー、それはね、芝池さんに聞いたからだよ」
“芝池さん”———わたしのお姉ちゃん。
どうしてお姉ちゃんはわたしの番号をわざわざこの男に教えたんだろう。
もうすぐ義理の妹になるから……とか?
「でもそれだったら、直接じゃなくてお姉ちゃん経由でもらってもよかったんじゃ」



