「結婚はしますよ、いずれね。今は婚約者で我慢します」
「柚葉、あんまり絢斗くんを待たせちゃダメよ」
母まで参戦してきて、姉の結婚に触発されているのかもしれない。
この調子だと、周りから早く結婚しろと催促されそうだ。
「もう来週から絃葉が家にいないのか。早いなあ。流星くん、絃葉のことよろしく頼むよ」
食事会の最中、父がしみじみとつぶやいた。
きっとこれまでの姉とのことを思い出しているのだろう。
わたしも姉があの家を出ていくなんて、あまり実感がわかない。
25年ずっと一緒にいたから、寂しいようないい人が見つかってうれしいような、複雑な気持ちだ。
食事会はそれからも終始和やかな空気の中進んでいった。
槇原さんのご両親もとても穏やかな方で、姉のことも気に入ってくれているようだ。