「こちらよかったらお使いくださーい」
水の中から手を引いたあたしを見て、職員さんがハンドタオルを渡してくれた。
それに「ありがとうございます」ってお礼を言って、あたしたちはその場をあとにする。
「かわいかったねえ」
「そうだね」
パシ、って。
何も言わず、さりげなく繋ぎなおされた手。
もう周りにあんまり人いないし。
”はぐれるから”って理由は、通用しないよ?
ね、水湊くん。
あたしと繋ぎたいからってことで、いい?
「——もうすぐイルカショーだしそれ見たら帰ろっか」
すぐ近くで、カップルの声が聞こえてきた。
イルカショー……。
「水湊くん」
「凛久ちゃん」
…あ。
名前呼ぶの、同時だった。
あたしたちは笑いあって、先に水湊くんが言葉を紡いだ。
「なんとなく、凛久ちゃんが何言おうとしたかわかる気がする」
「あたしも」
せーの。
「「イルカショー!」」



