【完】超一途な彼はお友達じゃ我慢できない。






「…なんか、楽しそうだね。凛久ちゃん」





急にそんなことを言われた。
あたしは、水槽のガラス越しに魚と戯れながら。





「楽しいよ。水湊くんのこといっぱい知れるから」





彼の顔を見上げる。
知らなかったことを知るっておもしろいよね。



あれ。
水湊くん、顔赤い。





「…熱?」


「え、いや…っ、無自覚? タチ悪いって…」





なんの話?
よくわかんないけど。





「今日、連れてきてくれてありがとう」



「…うん」





バイト中。
ちょっと暇な時間帯に、水湊くんのほうから切り出された今回のお出かけの話。





『凛久ちゃんって、魚とか見るの好き?』


『魚ー? 好きだよ』


『ホント? 今度女の子と行く予定だったんだけどドタキャンされて暇になったとこだったんだよね』


『え! ……あたしも行っていいってこと?』


『うん。デートのお誘い。どう?』





手慣れてたなあ、思い返しても。
…っていうか。


水湊くん、あのとき、”デート”って言ってた?




……で、でーと、ですって。