「……まあ、店のシステムはこんなもんかな」
開店まで残り三十分。
水湊くんのわかりやすい説明のおかげで、あらかた理解できた。
オーダーとるのとかはじめてだけど…大丈夫かなあ。
「緊張してる?」
「…ちょっとだけ」
「だよね。体ガチガチだもん」
水湊くんは笑いながらあたしの肩を揉んでくれた。
さりげないボディタッチ……チャラくないとか、嘘でしょ?
「まあ、俺もいるし」
「頼もしいね」
「分かる。頼もしいよね、俺」
分かるって……自分で言うことじゃないけど。
その即答具合がちょっと面白かったから、見逃してあげる。
「俺さー、距離近いかな」
「…え?」
急になに?
距離近いとはあんま思わなかったけど……さっきの肩揉むくだりとか?
「よく怒られんだよね、女の子の彼氏とかに」
「へえ……でもあたし彼氏いないから大丈夫だよ」
水湊くん、一瞬かたまったね。
なんか目見開いてるけど。そんな驚く?
「えっ、ホントに? 凛久ちゃんって彼氏いないの?」
「…え、いないよ?」
そこそんな確認する?
適当に流してくれてよかったんだけど。



