「凛久! おい、待てって…!」
何度呼びかけても振り返らない。
怒ってる? なんで?
校門を出たあとで、ようやく腕を捕まえた。
「凛久、なあ…っ、なに? どうしたんだよ」
走ったから息が切れた。
今はそんなことどうでもいい。
…なにも、喋ってくれない。
足は止めてくれたけど…。
「……凛久? なにかあった?」
凛久の肩をつかんで、ゆっくりこっちに顔を向かせる。
そのあとで、俺は目を見開いた。
「え…、なん……なんでお前、泣いてんの?」
くりっとした目から、大粒の涙がこぼれている。
泣くようなこと? 誰かにひどいこと言われた?
誰が凛久のこと泣かせた?
俺はきっともう、冷静じゃない。
「…なあ、凛久。教えて。なんで泣いてる?」
「っ……だ、だって…」
ようやく口を開いた凛久。
泣いてうまく話せないらしい。
「ゆっくりでいいから」と背中をさすった。



