「ふーん…でもそういうお世辞、今はいらない」
「え? いや、お世辞じゃっ…」
「ムカつくの。…芦屋さん」
……え?
ムカつくって、あたしに?
どこが、なにが。たくさん疑問符は浮かぶけど、衝撃で声が出なかった。
そんな…面と向かって言う?
「明らかにカナくんに気に入られてるし」
「……いや、気に入られてるっていうか…ただの友達だよ」
「ウソ。…もしかして、気づいてないの?」
信じられない、というようにあたしを見る綾野さん。
もうなにがなんだか…頭、こんがらがってる。
「はあ。こんなのに負けてるのが悔しいわ、ほんと……」
「へ? 負けてる…?」
「教えてあげないから。さっさと自分で気づけば?」
…え、ええ?
なんか綾野さん、イメージと違う。
気の強さでいったら歩夢にも負けないんじゃない…?
「あたしとここで話したこと、カナくんに言わないでね」
「うん」
「……絶対、諦めないんだから」
立ち上がった綾野さん。
べ、って舌を出して謎の宣言をしたあと、保健室を出ていった。
……今の顔、かわいかったな…。