「ふはっ、なんだその顔」
「……」
拗ねて頬を膨らませると笑われた。
ねえ、人の顔みて笑うとか失礼じゃない? さすがに。
だけど夏向があまりに楽しそうで、何も言えなかった。
それはそうと。
周りの女子から羨望のまなざしを向けられているから、はやく男子のほうにもどってほしいんだけど…。
「夏向、試合は?」
「もう俺はこれで休憩」
「ふーん……」
たくさん動いてたしね。
「おつかれさま」
「……おー」
なにその反応。
あたしが夏向をねぎらうのがそんなに不自然?
理由はわからないけど、隣で歩夢が「ふっ」と笑った。
「カナーっ! シュート対決しようぜー!」
「…今行く!」
コートのほうからクラスメイトに呼ばれた夏向は、よっこらせ、という効果音がつきそうなくらいゆっくり立ち上がる。
無理、しないでね。
これ以上微妙な反応されたくないから、心の中で思うだけにしといた。
「お前らも一回くらい参加しろよ」
「うん」
ひらひら、と手を振って見送る。
夏向は少し駆け足で男子の輪の中に入っていって、たぶん対戦相手を決めるジャンケンとかをしている。
参加しろっていわれても。
……女子なんか、ほとんど男子の観戦に夢中だし。
……あたしも例外じゃないし、たぶん。



