【完】超一途な彼はお友達じゃ我慢できない。





とっくに自分の席へ帰った歩夢を除いて、あたしは隣で繰り広げられるまこちゃんと夏向の会話を聞いていた。




体育……苦手なんだよね。
運動神経だけは、平凡下回ってるからさ。





「なあ、凛久はなにやりたい?」



「……へっ?」






突然話を振られて素っ頓狂な声を出すと、隣の席で頬杖をつく夏向と目が合った。



……な、んで逸らしたんだろう、今、あたし……。





「ぼーっとしてんなよ」





ふっと笑う夏向に、なんとなく笑い返した。
変だ。……こんなの、変だ。




心臓が、ドクドク言ってる。
いつもより速く、脈を打ってる。





「あー……あたしは、卓球」



「卓球楽しいよなー」



「はあ? ネットあるスポーツなんかおもんねーよ」






賛同してくれるまこちゃんと、批判する夏向。
なんで。卓球おもしろいでしょ!
全卓球プレイヤーに謝れ!!




と、そこへ、体操着の袋を持った歩夢がけだるそうに歩いてくる。





「凛久ー、そろそろ行こ」



「あっ……うん! じゃね、あとで」





ぶんぶんと手を振るまこちゃんに対して、夏向はなんの反応もなし。
前を向きなおせばもう歩夢が教室のドアを出たところで。



慌てて駆け寄って、「はやいよ」と文句をこぼす。
歩夢はぶれず、「凛久が油売ってんのが悪い」と全面的にあたしのせいにしてきた。