夏向だってさ。
嫌な顔ひとつ、しないじゃん。
綾野さんのこと聞かれたときは鬱陶しそうな顔するくせに、いざ綾野さんに呼ばれたらサッと立ち上がって行くじゃん。
……満更でもないんだろうなあ、って思う。
最近、特に強く。
「てかさ、凛久っていうほど平凡か?」
「……え。それ以外なにが……?」
「どうでもいいけどさ。凛久も意外と人目惹く容姿してんじゃん?」
人目。惹く。容姿。
……いや。
「ないよ、ナイナイ! 歩夢だったらわかるけどさ、かわいいし。あたしなんか超ド平凡です、ホント」
「急に饒舌」
「だって歩夢がわけわかんないこというからー……」
いつも通りの日常。
いつも通りのお昼休み。
それなのに、歩夢は”いつも通り”じゃない発言を繰り出してきた。
「なにをおびえてんだか知らないけど」
おびえてる?
……そう見えるかな、あたし。
歩夢が言うなら間違いない。
あたし、怯えてるから二人の間に割って入れないんだ。