最悪な夢を見てしまってから数日。
現実世界はなにも変わりなく。
そりゃそうか。
当たり前かって、何回もセルフツッコミした。
「まーた来てるよ。綾野」
毎日毎日飽きないね、と歩夢がパンを頬張りながらこぼす。
歩夢が綾野さんを呼び捨てにするのは、『そりゃ嫌いだから』と即答していた。
はっきり言うなあ……と苦笑いしたのを覚えてる。
「……夏向のこと、大好きなんだねえ」
「のんきに言ってる場合? 凛久も割り込んできたらいいじゃん」
「いっ……いや、意味わかんないし、あたしがいきなり……」
ごにょごにょと口ごもっていると、またしても興味なさそうに「そ?」と適当な相槌を打ってきた歩夢。
だいたい、割り込むって……。
ふたりの世界が出来上がっている、あそこに?
むりでしょ。あたしみたいな凡人、ぜったいむりでしょ!