あたし、そっと夏向から離れた。
泣きそうな顔、きっと不細工だと思う。
それでもいい。
きっと夏向なら、そういうの全部含めて好きでいてくれると思った。
「……あのね。漣に会ったよ、この前」
「…え」
心配そうな顔しないで。
やり直したいって言われたけどね、ちゃんと丁重にお断りしたからね。
あたしが言いたいのはそんなことじゃなくて。
「漣、謝ってくれた。全部全部、あたしを好きだったゆえの空回りだったって」
夏向、なにもいわない。
漣の話なんか聞きたくない? …でも、聞いて。
「ちゃんと、言えたの。漣に…」
「…なんて?」
「大切にしたい人がいる、って」
夏向。
やっと、笑ってくれた。
やっぱり、笑った顔が似合うね。
「もう、過去にとらわれないで前だけ向いて歩く決意が出来たのも事実。…それ以上に、」
ここ数か月で、あたしは変われた。
未熟だった心は、いつのまにか美味しそうに熟して。
夏向に食べられたいと、常に願ってる。



