保健室を出て、教室にゆっくり戻る。
体育には出ない。
ドアを開けて中を覗いた。
…うん。いるとおもった。
あたしの前の席で机に伏せて寝ている男子。
……ずっと、恋焦がれていた人。
誰もいない教室。
世界に、あたしと夏向の二人きり。
横にしゃがんで、夏向の寝顔を眺める。
…寝ててもかっこいいの、ずるい。
その顔を見ていたらどうしようもなく想いが溢れて。
「…好き」
気づいたら、声になっていた。
やっと。
…やっと、口にできた。
あたし、たぶんずっと、夏向だけを見てた。
『こんなの恋じゃない』
『恋愛感情抱くわけない』
『ただの友達』
ぜんぶ、ぜんぶ。
自分に言い聞かせてた。
いわば自己暗示。
夏向とは友達でいたかったよ、ずっと。
でも…小さな胸の違和感に気づくまで、何か月もかかって。
結果、その違和感は膨らみ過ぎて心臓を突き破りそうになってる。