最近まで、いろいろ遠回りしてたけどね。
…しすぎてたね。今も、ずっと待たせてる。
「…ピアス、まだあいてたんだね」
サラ、と風に吹いて見えた耳に向かって言う。
あぁ…うん。漣と付き合ってた、唯一の証。
なぜかずっと塞げなかった。
でも、これももう、いいかな。
「だけど、昔俺があげたピアスじゃないね」
「…最近までそれつけてたんだけどね」
「三か月の元カレにダメっていわれた?」
三か月の元カレって。
もっと言い方あるでしょ。
あたしは笑いながら「うん」って頷いた。
「外しちゃうんだ」
…うん。もう、いらない。
漣にとらわれていた日々は、もうやめにする。
あたしは耳からピアスをはずして、カバンの中に入れた。
「…前、向きたいから」
ずっと後ろばかり見てた。
水湊くんも、夏向も…あたしのせいで、振り回しちゃった。
「俺もそろそろ、成長しないとなぁ…」
「成長?」
「いつまでも、りっちゃんのこと引きずってるわけにいかないってこと」
うん。
あたしも漣も、お互いがお互いのことを引きずってた。
今になって答え合わせ。
…遅くなっちゃったけど、前を向かなきゃね。
漣と他愛もない話を10分くらい。
名残惜しいけど、あたしは”とらわれていた過去”にさよならした。
……次は未来に向かう番。