住宅街の、少し歩いた先。
一つ目の曲がり角。
浮かれて勢いよく曲がったら、タイミングよく歩いてきた人影にぶつかった。
「わっ……ご、ごめんなさ…っ」
尻もちをついて思わず目をぎゅっとつぶったあたしは、直後に頭上から降ってきた声に耳を疑った。
「…りっちゃん?」
覚えてる。
忘れるわけない。
何度も呼んでほしかった、あなただけの特別な呼び名。
大好きだった暖かい声。
”りっちゃん”と呼ぶのは、今までもこれからもこの人だけって思った。
ーードッ、ドッ…。
心臓が痛いくらい脈を打った。
本能がここにいちゃダメだ、はやく動かなきゃって言ってる。
冷や汗も噴出した。
…なんで、今更会っちゃうかなぁ。
「…れ、ん……」
「…久しぶり。大丈夫かよ」
そういって差し出された手を、ためらいながらつかんだ。
漣に引っ張られて立ち上がる。
そりゃ当たり前なのかもしれないけど、中学二年のときからあんまり変わってなかった。
昔もそれなりにかっこよくてモテてたし、今も…。



