『なんで…俺のことかばってくれたの』
『…ムカついたんだもん、綾野さんに』
夢みたいだと思った。
あの言葉の理由が、嫉妬だったらどんなにいいことか。
期待しながら、聞いたから。
なあ、凛久。
お前の目には今、誰が映ってる?
ミナト? …それとも、俺?
だってさ。
キスしても抵抗しねえじゃん、お前。
もう何も言わないじゃん。
この前はビンタしたのに。
…諦めたの? ミナトのこと。
やっと俺のこと、見る気になった?
俺のことただの友達ってさんざんうるさかったもんな。
それのせいで、余計お前のこと欲しくなったんだけど。
どう責任、取ってくれんの。
「…かな…っ」
名前を呼ぶ前に、もう一度口をつけた。
その細い首に、赤い印つけたら、さすがに怒る?
俺のモノにしたい。はやく。
…ミナトじゃなくて、俺を見て。
もう4年目の片思い、飽きたから。
そろそろ両想いに昇格させて。
お前の過去のトラウマも全部ひっくるめて愛してやるよ。
「…好き、凛久」
その潤んだ瞳に、俺だけを映して。
もう、ミナトのことなんか見なくていい。
「俺のモノになって」
…あーあ。こぼれた。
凛久の頬を伝う涙を、人差し指でなぞる。
『…凛久のこと泣かせたら、本気で奪いに行くから』
いつの日か、俺がミナトに言った言葉。
なんだ。
結局、泣かせてんのは俺じゃん。