( 夏向SIDE )
◇ ◇ ◇
『自分が特別だと思ってるのか知らないけど、そういうの、いい迷惑…だよ』
それだけ言い残して逃げるように走って行ってしまった。
すぐに追いかけようとした俺の腕を、柊里が引っ張る。
「っねえ……なんで、行くの? 放っておいたらいいじゃん…っ」
そうもいかねえよ。
柊里と凛久とじゃ、決定的な違いがある。
俺がここにいる理由は、もうない。
「…大切だから。守ってやりたいんだ、アイツのこと」
「……なんで? あたしじゃ、ダメなの?」
柊里のことは確かに好きだった時期もあった。
凛久と出会ったとき、柊里とは月に一回しか会わない関係だったし、それが関係あるのかしらないけど。
凛久と一緒にいる時間が増えれば、俺がアイツを好きになるのは必然だった。
「…あたしのほうが、ずっと好きだよ」
うん。そうだな。
何年も好きでいてくれて、ありがとう。
確かに、凛久は俺のこと好きじゃないかもしれない。
俺を好きだと言ってくれてる柊里のほうが、確実に付き合えはするだろうな。
…でもさ、それじゃダメなんだよ。



