「抽象画展示会やってま…す…」
途中で目に飛び込んできた光景に、あたしは思わず声を出すのも忘れた。
廊下の少し先。
…夏向と綾野さんだ。
海賊のコスプレを着た夏向と、かわいらしく桜色のパーカーで着飾った綾野さん。
楽しそうにふたりで並んでくるのが見える。
…やっぱり満更でもないんだ。夏向。
っていうか、付き合った?
あたしのこと、好きって言ったくせに。
綾野さん、かわいいしね。
そりゃ、あたしなんかを好きでいるより賢明な判断だと思うよ。
「お、凛久」
だから、そんなふうにあたしを見つけて笑顔にならないで。
勘違いしちゃうでしょ。
「三年のクレープうまかったよ」
「…そうなんだ、あとで行く」
綾野さんと食べてきたんだね。
どうでもいいけど。
なんでもいいけど。
夏向の隣でちょこんと立っている綾野さん。
あたしのことを敵視している女の子。
…そんなに睨まなくても、夏向のこととったりしないよ。
いや、この状況がもうすでに”取った”になるのか?



