【完】超一途な彼はお友達じゃ我慢できない。







断られたんだけど、家まで送ってくと言って一緒の駅で電車を降りた。
今日、楽しかった?



俺は…どうだろうね。





「家帰ったらもっかい原作読みなおそ」





ウキウキしながら俺の手をつかむ凛久ちゃん。
この手だって、つかみたくないなら無理しなくていいんだよ。




…俺ね。

本当に本当に、凛久ちゃんのこと大好きだった。





一目惚れからはじまった恋だったけど、付き合えてめちゃくちゃ幸せだった。



はじめてこんなにいろんな感情を出せて。
喜怒哀楽、ぜんぶうれしかった。




でもね、凛久ちゃん。
俺、気づいちゃった。





「あ! …水湊くん、送るのここまででいいよ、ありがとうね?」


「…うん、またね」


「うん! 水湊くん、大好き」





自己暗示みたいに”大好き”って言わないで。
違うよ、凛久ちゃん。




大好き、なんかじゃないよ。




住宅街の中に消えていった凛久ちゃんを、少したってから追いかけた。
怖いもの見たさだよね。ホント、あほなんだと思う。





……あーあ。
見なきゃよかった。




ちゃんと後悔するのにね。
学習しろ、バカ。




視線の先には、なぜかばったり遭遇したらしいカナタくんと並んで帰る凛久ちゃん。




彼氏を差し置いて他の男と帰ることがどれだけ罪が重いか知ってる?
俺が教えてあげるよ、知らないなら。




さっきの『あ!』は、カナタくんを見つけて嬉しいときの、『あ』?





…うん。知ってた。
だから、大丈夫。




凛久ちゃんがカナタくんを選んだって、平気。





あー、やっぱり、ダメだった。





…俺たち、もう終わりだね。