「…夏向、誕生日おめでとう」
そういいながらボールペンの入った袋を渡す。
目を見開いて恐る恐るそれを受け取った夏向。
…そんな、驚かなくても。
今年は祝ってもらえないと思った?
「…いいの?」
「え、うん」
「…超うれしい」
ヤバイ、って手で口元を隠す。
でも赤くなった顔は隠せてないよ。
「開けて良い?」
「うん」
丁寧に、包装がほどかれる。
中から出てきた黒色の長細い箱。
ゆっくり蓋を開けて…。
「…ボールペンだ」
「うん。よく見てみて」
あたしも夏向の手元をのぞき込む。
” Kanata ”と筆記体で刻印が入ってる。
オシャレ。あたしが欲しいくらい。
「すげぇ! こんなんはじめてもらった」
「…夏向だけの特別なボールペンだからね。大事にしてね」
「うん。一生使う!!」
いっ……一生は、無理なんじゃないかな。
間違いなくあたしに向けられたまぶしい笑顔から、そっと目をそらした。
…吸い込まれそうだった。
そんな顔で笑うなんて、ずるい。
夏向。



