「ちょっと苦しいけど我慢しなよ」
うっ……吐きそう。
時は8月。第一土曜日。
今日は待ちに待った夏祭り。
そして、水湊くんと付き合って半月が経つ。
お母さんの着付けはちょっと荒々しいけど、かわいい水色の浴衣に、髪の毛くるくる巻いてもらって幸せ気分だから。
「はい、完成! かわいいじゃん、凛久」
「ホント? 変じゃない…?」
ニコニコしてるお母さん。
娘の晴れ着にご満悦?
「お、良いかっこうしてんなあ、凛久」
あとからリビングに入ってきたお父さんがあくびしながら言う。
うん。楽しみ。
すっごくワクワクしてる。
「凛久ったら、彼氏とお祭りいくらしいよ」
「…彼氏? お前、いつの間に彼氏なんかできたんだ!?」
「あれ、言ってなかったの?」
もう…!
めんどくさいことになるからナイショにしてたのに!!
お母さんのバカ!!
「じゃ、じゃあ行ってきまーす!」
「あっ、凛久!!」
お父さんの呼び止める声も無視して家を飛び出した。
楽しみ……ふふ。
ずっと顔が綻んでる、あたし。
だって、恋人になってからはじめてのデートだ。