ふと、電車のアナウンス。
水湊くんの最寄り駅。
…だけど、ドアが開いても降りる様子がない。
「み、水湊くん?」
「うん?」
「水湊くんの最寄り、ついたけど…」
降りないの? そういう意思を込めて見上げたら、彼は困ったように眉を下げて笑った。
「凛久ちゃんのこと送ってく」
「え!? そんな…時間かかるよ?」
「俺はいいよ、もう暗くなるし女の子ひとりじゃ危ない」
どこまで優しいの…。
きゅうん、って胸が締め付けられた。
それから、何駅か停車して動いてを繰り返して。
やっとあたしの最寄り駅についた。
ふたりそろって電車を降りて改札を抜ける。
駅から家は、そんなに遠くない。
「俺さ、ムカついたんだよね」
「…え?」
二人きりになった途端、なんだ急に。
ムカついた…?
「やっぱりカナタくんのこと好きなのかなあってさ」
「えっ……いや、ない!! 断じてないっ、それだけは」
全力否定。
夏向は友達だし、これからも。



