「……ごめんね、さっき。腕痛かったでしょ」
駅につくまで、ずっと無言だった。
電車に乗り込んでしばらくして、やっと口を開いてくれる。
よかった…怒っては、なさそう。
「ううん。……でも、どうしたの?」
あんな強引な水湊くん、はじめて見た。
いつもとのギャップに…すこしドキドキしたけど。
「カナタくんのこと見てたでしょ」
「えっ……分かったの?」
水湊くん、一回しか会ってないのに夏向の顔覚えるなんて。
…それに、結構遠い距離にいたよ? よく気づいたね。
「……ねえもうさ、いいじゃん。…カナタくんのことなんか見なくても」
あたしは俯いたまま、言葉を返せなかった。
なんで……あたし、水湊くんといるのに夏向のこと見たんだろ。
吸い込まれるように、視線が動かせなかった。
それは本当に、夏向と綾野さんがお似合いすぎてたからなのかな。



