慌てて振り返ると、夏向。
そうだ。なんで夏向はふたりと一緒じゃなかったの?
夏向はふたりのこと知ってたの?
聞きたいことはたくさんあったけど、どれも声に出したら中でキスを繰り広げている友人たちに気づかれてしまう。
……ふっ、と目が合った。瞬間。
「…っ」
気づいたら、口を奪われていた。
夏向の顔が至近距離。
目つぶらなきゃとか、そんなことまで頭が回らなかった。
や、ばい……息、できないっ…。
夏向の胸板をトントン叩いて、なんとか離してもらう。
ねえ……なんで? どういうつもりで、キスしたの…?
「…かわい」
静かな廊下の中。
あたしにしか聞こえないくらい小さな声で、彼は言った。
もう、わかんない……。
ドキドキしすぎておかしくなる。
これは、そう。
吊り橋効果ってやつだよ、きっと。
歩夢たちにバレるかもっていう不安から生じるドキドキを、恋だって勘違いしてしまいそうになった。
……うん。勘違い。
夏向に恋するなんて、ありえない。



