( 凛久 SIDE )
◇ ◇ ◇
バイトも手慣れてきた。
水湊くんにも『覚えるのはやいね』って褒められたし、やる気出ちゃう。
「凛久ちゃん、これ3卓に運んでー」
キッチンの人に渡された料理をテーブルに運ぶだけ。
簡単なお仕事。
こんなの余裕だよってうつつを抜かしてたら痛い目みるんだよね。
現に。
さっきから、頭の中に夏向の告白が浮かんでは消えて……全然集中できてないんだもん。
「あ…空いたお皿おさげしてもいいですか?」
「いいよー」
お客さんの了承を得て、お皿を手に持つ。
三枚くらいならふつうは余裕だよね。
でもなんでかな。
やっぱり、夏向のせいかも。
ぐらぐら。
揺れたお皿が、地面に落ちて。
ーーパリンッ
勢いよく、割れた。
お客さんからの心配の眼差し。
慌てて拾おうとして、指切っちゃった。
……ぼーっとしすぎ。
あたし、何やってんの。