「なあ、そこ俺の席なんだけど」





びくって肩が震えた。
噂をすれば、ってやつだね。




夏向の目線はまっすぐ歩夢に向いている。
そのあと、まこちゃん、あたし、の順番で視界を移動させて、「はあ」と大きなため息をついた。





「知らないしー。カナはあゆの席でも使えば?」



「なんでだよ」





意味わかんないだろ、席トレードすんの。と、夏向は強めに文句を吐く。



歩夢は心底興味なさそうに自分の髪をくるくると指に巻き付けてはほどいて、遊んでる。
夏向も、歩夢には弱いんだよね。
っていうか。歩夢が強すぎる、という説も……?




そうやって自然と集まった、あたしたち四人。
あたし、夏向、歩夢、まこちゃん。




全員同じ中学校出身で、夏向以外は小学校も一緒の腐れ縁。




相談してないのに、全員同じ高校を受けて、全員合格した。
さっきの夫婦とかそういういじりも、中学のころからの定番ノリ的な感じ。





あたし、夏向のことは大好きだけど。
断じて恋とかじゃないから!!