「そういえばね……昔、来客用としてベッドが置いてあった部屋あったの覚えてる?」
「あ、はい」
中学のときよくお世話になったあの部屋ね。
「あれ、お父さんの作業部屋に改良しちゃってもうないの……」
「…え?」
作業部屋?
あたしが夏向のほうをチラッと見ると、夏向は視線をスマホに落としたまま淡々と答える。
「父さん、プラモデルにハマってさ」
……仕事とかじゃなくて、まさかの趣味部屋…!?
え、えっと、つまり…?
「だからね。言いづらいんだけど……今日は、夏向の部屋で寝てもらってもいい…?」
あたしの耳が壊れてなければ、夏向の部屋って聞こえたんだけど。
本当に言ってます?
仮にも思春期男女なんですけど!?
というか、親としてはアリなんですか…?
「夏向、凛久ちゃんに手出すんじゃないぞー」
後ろから声が聞こえて振り向けば、いつのまにか二階から降りてきていたらしい夏向パパ。
夏向パパはたしか在宅ワークがほとんどだったはずだから、今も仕事してたのかな?



