「……ホント、急すぎね」
「あは…」
玄関を開けてくれた夏向は、完全オフモード。
家ではメガネをかけてる。これ、結構知ってる人少ない。
ラフな黒いスウェット。
普段見れないよね。こんな夏向。
「とりあえず入れば」
「うん、おじゃまします」
ほらね。
許してくれた。やさし。
玄関に入って靴を脱ぐ。
うわあ……夏向の匂いが充満してる。
人の家に来たって感じ。
「飯食ってないだろ」
「うん」
「母さんが張り切って用意してた」
ありがたい…。
あたしは吸い込まれるようにリビングに入る。
いい匂いがして、おなかが鳴った。
「あら! 凛久ちゃん、よく来たねえ」
「お邪魔します……ごめんなさい、急に」
「全然いいのよ。それにしても、凛久ちゃんがうちに来るなんてホント久しぶり」
夏向ママ。
歓迎してくれてるみたいで、よかった…。
こんな急な訪問にも嫌な顔ひとつせず……助かる。



