( 凛久 SIDE )
◇ ◇ ◇
水湊くんとの水族館デートから数日。
いつも通りの学校が終わって、家の前まで帰ってきたわけなんですが。
人生で一番、大ピンチかもしれません。
「……うそでしょ」
今朝のうちに気づいておけばよかった。
家の鍵を忘れたことに……!
今日、確かお母さんたちは旅行に行ってて帰ってこないはず。
こんなド平日に仕事休んで旅行って、ラブラブが過ぎるでしょう…って思ったのはナイショだけど。
ええと。
どうしよう……?
こんなときに一番頼りになるのは。
あたしは迷わず電話をかける。
ディスプレイには”夏向”の文字。
プルル、プルル……。
ガチャ。
すごいね、2コールで出るなんて優秀。えらい。
「もしもし、夏向?」
『なに、珍しいな』
「あのね、お願いがあって……」