たった2か月の間にドタバタが続いて青山君も名志田先生も振り回されに振り回されてきた。 ようやくそれが落ち着いて野球部らしい練習を、、、。
今日も朝から教室は賑やかです。 「おーい、柿沢君 ノート貸してくれよ。」
「またまた丸写しか? 吉沢君。」 「丸写しなんてそんな失礼な、、、。」
「そうよねえ。 吉沢君が全部覚えられるとは思わないもんねえ。」 「何だよ 早坂さんまで、、、。」
「もしかしてさあ、お二人さん 出来てるの?」 「何が?」
「ノートを借りるってことはさあ、、、秘密のメッセージを書いてるんだよね?」 「何だそれ?」
休み時間ともなれば互いに突っついたり囃したりうるさいくらいですねえ。 その中で青山君は教科書と睨めっこを続けてます。
「ここ、教えてくれないかな?」 教科書を持って優紀の所へ、、、。
「ヒューヒュー アベックさん 仲いいなあ。」 「黙れ タコ坊主。」
「何だと? やるか 木村!」 「まあまあ、止めなさいってば。」
「見苦しいわよ。 高岡君。 ちっとはお考え遊ばせ。」 「きもいきもい。 そんななあ、猫撫で声で近付いてくるんじゃねえよ 川村。」
「あーーら、ごめんなさいねえ。 きもかった?」 「やめろって言ってんだ 馬鹿。」
本当にどうしようもないくらい賑やかなクラスです。 その中で優紀と青山君は勉強してます。
なんてったって商店街でボコボコにされて以来、大変だったんですから。 でもなんか最近の青山君は元気が無いんです。
(どうしたのかな? いろいろと有り過ぎて疲れてるとは思うけど何課変だぞ。) 優紀も冴えない笑顔に気になってばかり。
放課後もどことなく元気が無くて大丈夫かと心配してしまう優紀なのでした。 それでも、、、。
「ぼくのことなら心配無いよ。 疲れてるだけだから。」 青山君はそう言って帰っていくんです。
優紀は取り合えず言葉を信用して見守ることにしました。
さてさて時は流れ大会が始まってしまいまして、地区はそれぞれに大盛り上がり。
でも高野連は気が気ではありません。 またまた事件が起きないかと、、、。
青山君をボコった生徒たちは事件後、保護観察を受けています。 過去の事件が明らかにされたので、、、。
優紀は今日もスコアブックと睨めっこしながら部員たちが走り回る姿を追い掛けています。 「元気いいなあ。」
「よしよし。 センターにフライが飛ぶぞ!」 コーチの光原先生がボールを投げ挙げて気持ち良くスイング!
「先生 空振り!」 北村君が大声で叫びました。
「分かっとる。 いちいち突っ込むな!」 改めまして思い切りスイング!
でも今度は勢いが良過ぎてフェンスを越えて行きました。 「先生! 取れません!」
「いいや。 吉岡先生、代わって。」 光原先生は悔しそうにバットを置きました。
コン! いい音でボールが飛んでいきます。 センターの中川君は懸命に追いかけて行きますねえ。
フェンスギリギリで捕まえました。 「お見事!」
「いいか、一回取れたからってそれでいい気になるなよ!」 名志田先生が檄を飛ばします。
チームも盛り上がってきました。 「よし。 じゃあレギュラーのメンバーを発表する。」
それは下の通り、、、。
1番 ショート 笠村君。
2番 キャッチャー 川崎君。
3番 ファースト 吉田君。
4番 サード 留岡君。
5番 レフト 笹井君。
6番 セカンド 山村君。
7番 ライト 梶原君。
8番 センター 中川君。
9番 ピッチャー 北村君。
「いいか。 このメンバーで地区大会に挑戦する。 勝っても負けても一本勝負だ。 空回りはするなよ。」 「空回り?」
「北村、特にお前が危ないんだ。 緊張するとボールが先行する。 そうなったら後がダメだ。 分かってるよな?」 「はい。 でも青山君は?」
「青山か? 出したいか?」 「ぜひ、、、。」
「青山に頼るようならお前じゃあ心配だなあ。」 名志田先生は青山君を見ながら笑っています。
「分かったよ。 投げなくても勝てるくらいの試合にしてやる。」 「その息で頑張れ。」
北村君がメンバーを集めて円陣を組みました。 名志田先生は青山君と話してます。
優紀はどちらにも目を配りながらスコアブックで顔を隠しました。
大会までには後が有りません。 こんなチームで勝てるんだろうか?
優紀はやっぱり心配なんです。 ゴタゴタガ続いたおかげで青山君も疲れ切っているし、みんなもどっか上ずってる感じ。
(これで試合が出来るのかな?) 優紀が考えたってどうしようもないことなんです。
それは分かってるんだけど青山君のふと見せるあの顔がどうも、、、。 妹さんのことも心配だし。
その頃、県内では地区大会が順次始まっていて東部地区もそろそろですっていう状況になってきました。
でもね、北村君たちは毎日必死に走り回ってます。 なんてったって彼らは少年野球のチームで走り回ってた人たちだから。
あの頃のようにはならないと思いながらそれでも泥まみれになって走ってます。 いつか見た青春ドラマみたい。
さすがに夕日に向かって走る人は居ないけど、それでもなぜか緊迫感がヒシヒシと伝わってくるんですよね。
「北村、球威が付いてきたな。」 「そうっすか?」
「最初の頃とはまったく違うよ。」 「集中してるんだなあ。」
「そりゃそうですよ。 撃たれたくないもん。」 「馬鹿。 気を抜く時には抜くんだ。 じゃないと疲れちまうぞ。」
「そうだよ。 ボールは軽く見せ球にするんだ。 どうせ打ってもファールなんだから。」 「そんなもん?」
「そうだ。 お前はシンカーが武器なんだよ。 カーブは見せ球でいい。 肩を抜け。」 「え? 肩を抜いたら投げれない。」
「馬鹿だなあ。 肩の力を抜くんだよ。 肩を抜くやつが何処に居るんだ?」 「北村君です。」
空かさず柿沢君がチャチャを入れたので名志田先生は閻魔様みたいな顔で彼を睨み付けました。
「、、、。」 「反省するなら街路で走ってこい!」
名志田先生もいよいよ本気モードですね。 柿沢君はパチンコ玉みたいに飛び出していきました。
それから数日後。 「今日はいよいよ地区大会だ。 全力を尽くして戦ってくれ。」
名志田先生も真剣な顔で部員たちを見回しています。 北村君は腕を振りながらリラックス、、、?
「いやあ、緊張するなあ。」 「何がだよ?」
「だって相手は田原西だぜ。 去年あんだけ撃ち込まれた高校だ。 勝てるかなあ?」 「勝てないって思うんだったら帰ってもいいぞ。」
「いやいや、やるけどさ、、、。」 「勝つって決めろ。 勝つかなあ?じゃ負けるぞ。」
「でも、、、、。」 「お前なあ、何のために今まで苦労してきたんだ? 弱虫は要らないよ。」
「分かった。 やるよ。」 北村君はマウンドを見ました。
優紀もグラウンドを見詰めています。 (精一杯やってほしいな。 これまで大変だったんだから。)
午前9時、田原西の選手たちも揃って挨拶を交わした北村君たちはグラウンドへ散りました。
「プレーボール!」 審判が叫んでいよいよ試合開始です。
「1番 ショート 垣之下君。」 スタンドは応援と冷笑が入り混じって何とも変な空気。
「去年まで一本も打てなかったあいつらがまた出てきたのか。 今年も完封だな。」 そんな囁きも聞こえてきます。
北村君は自信たっぷりに振りかぶって投げてきました。 ズドーン。
その球威に田原西の監督 郡山先生も唖然としています。 「おいおい、あれが北村か?」
「いやあ、ほんのまぐれでしょうよ。 あんなはずは無い。 いずれ壊れるんだから心配は無用ですよ。」 「だといいんだが、、、。」
2球目もズドーンと決まって初っ端から決めてきます。 垣之下君も身構えている様子。
川崎君はボールを要求してきました。 そこで、、、。
3球目はフワッと投げてきた北村君。 追い込まれていた垣之下君は思い切り振り抜いたんですが、、、。
「ストライク! バッターアウト!」 審判の声にスタンドが騒がしくなってきました。
「嘘だろう? 八百長はやめろ!」 そんな声まで聞こえてきます。
「2番 ピッチャー 坂崎君。」 「打てーーーーー! 北村何課吹き飛ばしちまえーーーー!」
そんなヤジに爆笑すらする応援団、、、。 優紀は渋い顔で名志田先生を見ました。
でも名志田先生はそんなのもお構いなし。 悠然と構えて北村君のピッチングを見守っています。
「ストライクーーーー!」 その声にどよめきも起きました。
それもそのはず。 去年の試合ではストライクを一つも取れなかったんですから。
2球目を打ち返した坂崎君でしたが、それがファールになってすごく悔しそう。 歯を食いしばってバットを構え直します。
ズドーン。 ボールだと思って見逃した球はど真ん中へ。
「ちきしょう、やりやがったなあ!」 すごい形相で北村君を睨み付けますが、北村君は飄々としています。
(何だあいつ? 去年はボロボロだったのに、、、。) 迷っていた坂崎君はあっさり三振してしまいました。
今日も朝から教室は賑やかです。 「おーい、柿沢君 ノート貸してくれよ。」
「またまた丸写しか? 吉沢君。」 「丸写しなんてそんな失礼な、、、。」
「そうよねえ。 吉沢君が全部覚えられるとは思わないもんねえ。」 「何だよ 早坂さんまで、、、。」
「もしかしてさあ、お二人さん 出来てるの?」 「何が?」
「ノートを借りるってことはさあ、、、秘密のメッセージを書いてるんだよね?」 「何だそれ?」
休み時間ともなれば互いに突っついたり囃したりうるさいくらいですねえ。 その中で青山君は教科書と睨めっこを続けてます。
「ここ、教えてくれないかな?」 教科書を持って優紀の所へ、、、。
「ヒューヒュー アベックさん 仲いいなあ。」 「黙れ タコ坊主。」
「何だと? やるか 木村!」 「まあまあ、止めなさいってば。」
「見苦しいわよ。 高岡君。 ちっとはお考え遊ばせ。」 「きもいきもい。 そんななあ、猫撫で声で近付いてくるんじゃねえよ 川村。」
「あーーら、ごめんなさいねえ。 きもかった?」 「やめろって言ってんだ 馬鹿。」
本当にどうしようもないくらい賑やかなクラスです。 その中で優紀と青山君は勉強してます。
なんてったって商店街でボコボコにされて以来、大変だったんですから。 でもなんか最近の青山君は元気が無いんです。
(どうしたのかな? いろいろと有り過ぎて疲れてるとは思うけど何課変だぞ。) 優紀も冴えない笑顔に気になってばかり。
放課後もどことなく元気が無くて大丈夫かと心配してしまう優紀なのでした。 それでも、、、。
「ぼくのことなら心配無いよ。 疲れてるだけだから。」 青山君はそう言って帰っていくんです。
優紀は取り合えず言葉を信用して見守ることにしました。
さてさて時は流れ大会が始まってしまいまして、地区はそれぞれに大盛り上がり。
でも高野連は気が気ではありません。 またまた事件が起きないかと、、、。
青山君をボコった生徒たちは事件後、保護観察を受けています。 過去の事件が明らかにされたので、、、。
優紀は今日もスコアブックと睨めっこしながら部員たちが走り回る姿を追い掛けています。 「元気いいなあ。」
「よしよし。 センターにフライが飛ぶぞ!」 コーチの光原先生がボールを投げ挙げて気持ち良くスイング!
「先生 空振り!」 北村君が大声で叫びました。
「分かっとる。 いちいち突っ込むな!」 改めまして思い切りスイング!
でも今度は勢いが良過ぎてフェンスを越えて行きました。 「先生! 取れません!」
「いいや。 吉岡先生、代わって。」 光原先生は悔しそうにバットを置きました。
コン! いい音でボールが飛んでいきます。 センターの中川君は懸命に追いかけて行きますねえ。
フェンスギリギリで捕まえました。 「お見事!」
「いいか、一回取れたからってそれでいい気になるなよ!」 名志田先生が檄を飛ばします。
チームも盛り上がってきました。 「よし。 じゃあレギュラーのメンバーを発表する。」
それは下の通り、、、。
1番 ショート 笠村君。
2番 キャッチャー 川崎君。
3番 ファースト 吉田君。
4番 サード 留岡君。
5番 レフト 笹井君。
6番 セカンド 山村君。
7番 ライト 梶原君。
8番 センター 中川君。
9番 ピッチャー 北村君。
「いいか。 このメンバーで地区大会に挑戦する。 勝っても負けても一本勝負だ。 空回りはするなよ。」 「空回り?」
「北村、特にお前が危ないんだ。 緊張するとボールが先行する。 そうなったら後がダメだ。 分かってるよな?」 「はい。 でも青山君は?」
「青山か? 出したいか?」 「ぜひ、、、。」
「青山に頼るようならお前じゃあ心配だなあ。」 名志田先生は青山君を見ながら笑っています。
「分かったよ。 投げなくても勝てるくらいの試合にしてやる。」 「その息で頑張れ。」
北村君がメンバーを集めて円陣を組みました。 名志田先生は青山君と話してます。
優紀はどちらにも目を配りながらスコアブックで顔を隠しました。
大会までには後が有りません。 こんなチームで勝てるんだろうか?
優紀はやっぱり心配なんです。 ゴタゴタガ続いたおかげで青山君も疲れ切っているし、みんなもどっか上ずってる感じ。
(これで試合が出来るのかな?) 優紀が考えたってどうしようもないことなんです。
それは分かってるんだけど青山君のふと見せるあの顔がどうも、、、。 妹さんのことも心配だし。
その頃、県内では地区大会が順次始まっていて東部地区もそろそろですっていう状況になってきました。
でもね、北村君たちは毎日必死に走り回ってます。 なんてったって彼らは少年野球のチームで走り回ってた人たちだから。
あの頃のようにはならないと思いながらそれでも泥まみれになって走ってます。 いつか見た青春ドラマみたい。
さすがに夕日に向かって走る人は居ないけど、それでもなぜか緊迫感がヒシヒシと伝わってくるんですよね。
「北村、球威が付いてきたな。」 「そうっすか?」
「最初の頃とはまったく違うよ。」 「集中してるんだなあ。」
「そりゃそうですよ。 撃たれたくないもん。」 「馬鹿。 気を抜く時には抜くんだ。 じゃないと疲れちまうぞ。」
「そうだよ。 ボールは軽く見せ球にするんだ。 どうせ打ってもファールなんだから。」 「そんなもん?」
「そうだ。 お前はシンカーが武器なんだよ。 カーブは見せ球でいい。 肩を抜け。」 「え? 肩を抜いたら投げれない。」
「馬鹿だなあ。 肩の力を抜くんだよ。 肩を抜くやつが何処に居るんだ?」 「北村君です。」
空かさず柿沢君がチャチャを入れたので名志田先生は閻魔様みたいな顔で彼を睨み付けました。
「、、、。」 「反省するなら街路で走ってこい!」
名志田先生もいよいよ本気モードですね。 柿沢君はパチンコ玉みたいに飛び出していきました。
それから数日後。 「今日はいよいよ地区大会だ。 全力を尽くして戦ってくれ。」
名志田先生も真剣な顔で部員たちを見回しています。 北村君は腕を振りながらリラックス、、、?
「いやあ、緊張するなあ。」 「何がだよ?」
「だって相手は田原西だぜ。 去年あんだけ撃ち込まれた高校だ。 勝てるかなあ?」 「勝てないって思うんだったら帰ってもいいぞ。」
「いやいや、やるけどさ、、、。」 「勝つって決めろ。 勝つかなあ?じゃ負けるぞ。」
「でも、、、、。」 「お前なあ、何のために今まで苦労してきたんだ? 弱虫は要らないよ。」
「分かった。 やるよ。」 北村君はマウンドを見ました。
優紀もグラウンドを見詰めています。 (精一杯やってほしいな。 これまで大変だったんだから。)
午前9時、田原西の選手たちも揃って挨拶を交わした北村君たちはグラウンドへ散りました。
「プレーボール!」 審判が叫んでいよいよ試合開始です。
「1番 ショート 垣之下君。」 スタンドは応援と冷笑が入り混じって何とも変な空気。
「去年まで一本も打てなかったあいつらがまた出てきたのか。 今年も完封だな。」 そんな囁きも聞こえてきます。
北村君は自信たっぷりに振りかぶって投げてきました。 ズドーン。
その球威に田原西の監督 郡山先生も唖然としています。 「おいおい、あれが北村か?」
「いやあ、ほんのまぐれでしょうよ。 あんなはずは無い。 いずれ壊れるんだから心配は無用ですよ。」 「だといいんだが、、、。」
2球目もズドーンと決まって初っ端から決めてきます。 垣之下君も身構えている様子。
川崎君はボールを要求してきました。 そこで、、、。
3球目はフワッと投げてきた北村君。 追い込まれていた垣之下君は思い切り振り抜いたんですが、、、。
「ストライク! バッターアウト!」 審判の声にスタンドが騒がしくなってきました。
「嘘だろう? 八百長はやめろ!」 そんな声まで聞こえてきます。
「2番 ピッチャー 坂崎君。」 「打てーーーーー! 北村何課吹き飛ばしちまえーーーー!」
そんなヤジに爆笑すらする応援団、、、。 優紀は渋い顔で名志田先生を見ました。
でも名志田先生はそんなのもお構いなし。 悠然と構えて北村君のピッチングを見守っています。
「ストライクーーーー!」 その声にどよめきも起きました。
それもそのはず。 去年の試合ではストライクを一つも取れなかったんですから。
2球目を打ち返した坂崎君でしたが、それがファールになってすごく悔しそう。 歯を食いしばってバットを構え直します。
ズドーン。 ボールだと思って見逃した球はど真ん中へ。
「ちきしょう、やりやがったなあ!」 すごい形相で北村君を睨み付けますが、北村君は飄々としています。
(何だあいつ? 去年はボロボロだったのに、、、。) 迷っていた坂崎君はあっさり三振してしまいました。



