翌日、朝早くに県議会議長が珍しく声明を出しました。
「今回の高校野球地区大会をめぐる騒動について県議会として立場を明確にしたいと思います。
一点目は事件を起こした生徒については警察なり少年院なりが的確な判断によって更正への指導を強めていただくこと。
暴力によって解決することはたとえ未成年者であってもけしからんことであります。
二点目はその他の学生 及び 野球部員については非難されるべきではないということです。
高校野球以外でも未成年者のスポーツはフェアプレーが原則であり、正々堂々と試合をする中で各々が青春を全うできればいいのではないかと思われるからであります。
三点目はこの騒動が長引いたことで退職 退学を余儀なくされた生徒や教員が出てしまいました。
真に遺憾であり、高野連の責任は免れ得ないものと思います。」
議長の記者会見はまだまだ続いている。 青山君も名志田先生も部屋でこの放送を聞いていました。
昼過ぎになって名志田先生は県庁に呼び出され、、、。 「ぜひ当校で職務を続けてくれないか?)と打診されました。
「しばらく考えさせてもらえないか? 野球部の部員たちも相当数が退学している今、結論を出すわけには、、、。」
「あんたの言い分も分かるがね、こちらとしては早く決着させて地区大会に臨みたいんだよ。」 「それは私も同じですが、、、。」
「じゃあ、すぐに高校に戻ってください。 生徒たちもなるべく早く、、、。」 高野連の幹部は県教委と一緒になっておすがりを始めた。
県庁を出た名志田先生はどうしたらいいのか分からない複雑な顔で青山君の寮へやってきました。 「先生、どうしたんですか?」
「いやね、騒動を納めるから高校に戻れって言ってきたんだよ。」 「勝手すぎます。」
「私もそうは思うんだが、県教委も一緒と有っては下手に突き返すわけにもいかない。 そこで悩んでるんだよ。」 「北村たちは、、、?」
「そう。 あいつらも学校に呼び戻せって言ってきてるんだ。」 「校長があれでは戻らないでしょう。」
「そこが悩みの種なんだよ。 どうしたもんかね?」
名志田先生は溜息を吐きながらボトルのお茶を飲みました。
優紀はというとケーキを渡してすっ飛ぶように家に帰ったものの、今でも何となく気になっているようです。 (ケーキ 食べてくれたかな?)
自転車に突っ込まれてから入院している間に環境がガラリと変わってしまったので気が気ではありません。
学校に行っても北村君たちでさえ退学してしまって居ないのですから。 「みんな、居ないんだよな。 どうしちゃったんだろう?」
教科書を開いても集中することが出来ません。 担任までが心配するくらいに落ち込んだまま。
北村君たちはというとみんなでバッティングセンターに集まってバッティング練習をしています。 「優紀たちはどうしてるかなあ?」
「さあなあ。 騒ぎが騒ぎだから何にも出来ないんじゃないの?」 「そうかもしれないけど、これはやり過ぎだったんじゃないのか?」
「渡辺たちが暴走しなかったらこんなことにはならなかったんだよ。 そうだろう?」 「それはそうだけどさ、、、。」
そこへもう一人のマネーじゃあ 川田智明君が慌てたような顔で飛び込んできました。
「どうしたんだよ?」 「今朝のニュースを見たか?」
「見てないけど何か有ったのか?」 「名志田先生たちが高野連ともめてたんだよ。」
「何だって?」 北村君たちは集まってきました。
「青山を追い掛けていた記者が居て、高野連に飛び込んだら名志田先生たちがものすごい顔で交渉してたんだって。」 「ほんとか?」
「その様子がニュースで出てたから本当だろう。 学校も俺たちを復学させようとしてるらしい。
「あの校長が居るんじゃ復学は無理だよ。 お前も分かってるだろう?」 「それはそうだけど、、、。」
「おい、走り込みしようぜ。 ここで溜まってたって何にも出来ねえから。」 「それもそうだ。」
そこでみんなは街路に出て走り始めました。 わざと学校の前も通ります。
教室を見上げてみると優紀が窓から顔を出してボーっとしているのが見えました。
北村君たちは学校を一周して教室を見上げます。 それに気付いた優紀が手を振りました。
「おい、優紀が見てたぞ。」 「分かってるよ。 俺たちを待ってるんだ。」
「あいつさえ居なかったらな、、、。」 何周かして校門の所にまで来ると教頭が立っています。 どうしたんでしょうか?
「君たちは野球部員だね?」 「そうです。」
「ぜひ、学校に戻って来てくれないか?」 不意に言われたってみんなは困るばかり。
「対応がまずかったのであれば謝る。 だから戻って来てくれないか?」 北村君は優紀の表情を思い出しながら言葉を探していますが、、、。
「まずかったって本当に分かってるんですか?」 いつもはおとなしい稲村君が詰問しました。
「ああ。 しかし私たちだけでは判断しにくい問題も有る。 ぜひ、君たちの意見も聞きたいんだ。」 「聞いてどうするんですか?」
さらに稲村君が切り込んでいく。 「名志田先生のことも青山君のことも併せて考えたいんだ。」
「それは退学を撤回するってことですか?」 「結論がそうであればそうするよ。」
「結論はそれしか無いんです。 明言できないのであればこのまま失礼します。」 稲村君は北村君たちを動かした。
「待ってくれ! 君たちの意見を校長に伝える。 だから待ってくれ!」 教頭の泣くような声を聴きながら北村君たちはバス通りへ出て行った。
「あれで良かったのか?」 「分かんないよ。 でも教頭が出てきたってことは相当に焦ってるってことだろう?」
「とは思うけど、当の校長がどうするかが問題だ。」 「それだけじゃない。 あの教務主任にも謝ってもらわないと、、、。」
「謝るだけで済むかってんだ。 消えてほしいくらいだよ。」 「そりゃ気持ちは分かるけどそれは、、、。」
北村君たちは走り続けています。 商店街まで来た時、目の前に誰かがやってきました。
「あ、青山じゃないか。 どうしたんだ?」 「北村君たちが走ってるって聞いたもんだから来たんだよ。」
「誰に?」 「優紀だよ。 学校の前も通ったんだって?」
「そりゃそうだよ。 優紀が心配してるんじゃないかと思って、、、。」 稲村君が腕時計を覗いた。
「けっこう走ってたんだなあ。 もう2時だってよ。」 「みんなも学校に戻るのか?」
「教頭がさあ、校長を何とかするから戻って来いって泣いてたんだよ。」 「そうか。 やっぱりな。」
「やっぱりって何だよ? やっぱりって?」 「昨日さ、俺の寮に教頭から謝罪の電話が来たんだよ。」
「謝罪? あいつが?」 「そうなんだ。 校長も勢いで君たちに退学を言い渡した。 私が責任を取るから野球部みんなで戻って来てくれないか?って。」
その話を聞いた北村君は真剣な顔でみんなを見回しています。 「どうする?」
「そこまで言うんなら戻るか。 でもさ、名志田先生はどうするんだろう?」 「心配無いよ。」
陰で話を聞いていた名志田先生が出てきました。 「先生、、、、。」
「お前たちにも心配を掛けちまったな。 あの校長も今月いっぱいで責任を取って退任するそうだ。 来週からみんなでまたグラウンドを走ろうじゃないか。」
「ほんとっすか?」 「ほんとだ。 頑張ろうじゃないか。」
「北村、、、。」 青山君は泣いている北村君の肩を叩きました。
「今回の高校野球地区大会をめぐる騒動について県議会として立場を明確にしたいと思います。
一点目は事件を起こした生徒については警察なり少年院なりが的確な判断によって更正への指導を強めていただくこと。
暴力によって解決することはたとえ未成年者であってもけしからんことであります。
二点目はその他の学生 及び 野球部員については非難されるべきではないということです。
高校野球以外でも未成年者のスポーツはフェアプレーが原則であり、正々堂々と試合をする中で各々が青春を全うできればいいのではないかと思われるからであります。
三点目はこの騒動が長引いたことで退職 退学を余儀なくされた生徒や教員が出てしまいました。
真に遺憾であり、高野連の責任は免れ得ないものと思います。」
議長の記者会見はまだまだ続いている。 青山君も名志田先生も部屋でこの放送を聞いていました。
昼過ぎになって名志田先生は県庁に呼び出され、、、。 「ぜひ当校で職務を続けてくれないか?)と打診されました。
「しばらく考えさせてもらえないか? 野球部の部員たちも相当数が退学している今、結論を出すわけには、、、。」
「あんたの言い分も分かるがね、こちらとしては早く決着させて地区大会に臨みたいんだよ。」 「それは私も同じですが、、、。」
「じゃあ、すぐに高校に戻ってください。 生徒たちもなるべく早く、、、。」 高野連の幹部は県教委と一緒になっておすがりを始めた。
県庁を出た名志田先生はどうしたらいいのか分からない複雑な顔で青山君の寮へやってきました。 「先生、どうしたんですか?」
「いやね、騒動を納めるから高校に戻れって言ってきたんだよ。」 「勝手すぎます。」
「私もそうは思うんだが、県教委も一緒と有っては下手に突き返すわけにもいかない。 そこで悩んでるんだよ。」 「北村たちは、、、?」
「そう。 あいつらも学校に呼び戻せって言ってきてるんだ。」 「校長があれでは戻らないでしょう。」
「そこが悩みの種なんだよ。 どうしたもんかね?」
名志田先生は溜息を吐きながらボトルのお茶を飲みました。
優紀はというとケーキを渡してすっ飛ぶように家に帰ったものの、今でも何となく気になっているようです。 (ケーキ 食べてくれたかな?)
自転車に突っ込まれてから入院している間に環境がガラリと変わってしまったので気が気ではありません。
学校に行っても北村君たちでさえ退学してしまって居ないのですから。 「みんな、居ないんだよな。 どうしちゃったんだろう?」
教科書を開いても集中することが出来ません。 担任までが心配するくらいに落ち込んだまま。
北村君たちはというとみんなでバッティングセンターに集まってバッティング練習をしています。 「優紀たちはどうしてるかなあ?」
「さあなあ。 騒ぎが騒ぎだから何にも出来ないんじゃないの?」 「そうかもしれないけど、これはやり過ぎだったんじゃないのか?」
「渡辺たちが暴走しなかったらこんなことにはならなかったんだよ。 そうだろう?」 「それはそうだけどさ、、、。」
そこへもう一人のマネーじゃあ 川田智明君が慌てたような顔で飛び込んできました。
「どうしたんだよ?」 「今朝のニュースを見たか?」
「見てないけど何か有ったのか?」 「名志田先生たちが高野連ともめてたんだよ。」
「何だって?」 北村君たちは集まってきました。
「青山を追い掛けていた記者が居て、高野連に飛び込んだら名志田先生たちがものすごい顔で交渉してたんだって。」 「ほんとか?」
「その様子がニュースで出てたから本当だろう。 学校も俺たちを復学させようとしてるらしい。
「あの校長が居るんじゃ復学は無理だよ。 お前も分かってるだろう?」 「それはそうだけど、、、。」
「おい、走り込みしようぜ。 ここで溜まってたって何にも出来ねえから。」 「それもそうだ。」
そこでみんなは街路に出て走り始めました。 わざと学校の前も通ります。
教室を見上げてみると優紀が窓から顔を出してボーっとしているのが見えました。
北村君たちは学校を一周して教室を見上げます。 それに気付いた優紀が手を振りました。
「おい、優紀が見てたぞ。」 「分かってるよ。 俺たちを待ってるんだ。」
「あいつさえ居なかったらな、、、。」 何周かして校門の所にまで来ると教頭が立っています。 どうしたんでしょうか?
「君たちは野球部員だね?」 「そうです。」
「ぜひ、学校に戻って来てくれないか?」 不意に言われたってみんなは困るばかり。
「対応がまずかったのであれば謝る。 だから戻って来てくれないか?」 北村君は優紀の表情を思い出しながら言葉を探していますが、、、。
「まずかったって本当に分かってるんですか?」 いつもはおとなしい稲村君が詰問しました。
「ああ。 しかし私たちだけでは判断しにくい問題も有る。 ぜひ、君たちの意見も聞きたいんだ。」 「聞いてどうするんですか?」
さらに稲村君が切り込んでいく。 「名志田先生のことも青山君のことも併せて考えたいんだ。」
「それは退学を撤回するってことですか?」 「結論がそうであればそうするよ。」
「結論はそれしか無いんです。 明言できないのであればこのまま失礼します。」 稲村君は北村君たちを動かした。
「待ってくれ! 君たちの意見を校長に伝える。 だから待ってくれ!」 教頭の泣くような声を聴きながら北村君たちはバス通りへ出て行った。
「あれで良かったのか?」 「分かんないよ。 でも教頭が出てきたってことは相当に焦ってるってことだろう?」
「とは思うけど、当の校長がどうするかが問題だ。」 「それだけじゃない。 あの教務主任にも謝ってもらわないと、、、。」
「謝るだけで済むかってんだ。 消えてほしいくらいだよ。」 「そりゃ気持ちは分かるけどそれは、、、。」
北村君たちは走り続けています。 商店街まで来た時、目の前に誰かがやってきました。
「あ、青山じゃないか。 どうしたんだ?」 「北村君たちが走ってるって聞いたもんだから来たんだよ。」
「誰に?」 「優紀だよ。 学校の前も通ったんだって?」
「そりゃそうだよ。 優紀が心配してるんじゃないかと思って、、、。」 稲村君が腕時計を覗いた。
「けっこう走ってたんだなあ。 もう2時だってよ。」 「みんなも学校に戻るのか?」
「教頭がさあ、校長を何とかするから戻って来いって泣いてたんだよ。」 「そうか。 やっぱりな。」
「やっぱりって何だよ? やっぱりって?」 「昨日さ、俺の寮に教頭から謝罪の電話が来たんだよ。」
「謝罪? あいつが?」 「そうなんだ。 校長も勢いで君たちに退学を言い渡した。 私が責任を取るから野球部みんなで戻って来てくれないか?って。」
その話を聞いた北村君は真剣な顔でみんなを見回しています。 「どうする?」
「そこまで言うんなら戻るか。 でもさ、名志田先生はどうするんだろう?」 「心配無いよ。」
陰で話を聞いていた名志田先生が出てきました。 「先生、、、、。」
「お前たちにも心配を掛けちまったな。 あの校長も今月いっぱいで責任を取って退任するそうだ。 来週からみんなでまたグラウンドを走ろうじゃないか。」
「ほんとっすか?」 「ほんとだ。 頑張ろうじゃないか。」
「北村、、、。」 青山君は泣いている北村君の肩を叩きました。



