「あ、目が覚めた?良かった」
さっき女の子たちに殴られた子を「salt」の部屋に連れて来た。女の子はキョロキョロしながら周りを見渡している。
「大丈夫?水飲みな」
安心させるように俺は声をかけた。フードを被っていてよく顔は見えないがやや緊張しているように見える。
「あ、はい。わざわざすみません」
とても綺麗な声で答えてくれた。
「いいよ。あんなに殴られたから痛かったでしょう?」
「いえ、大丈夫です。あ、あの、、ここはどこですか?」
動こうとすると女の子は顔を歪めた。相当痛いんだろう。
「すごい痛いね。ここは俺達の部屋だから安心して休んで。それに知り合いの手当てが上手な人が来るからもう少し待ってて」
俺も多少なりとは出来るけどこの子の傷はひどいから双葉を呼んだ。双葉は極度の女の子嫌いだけど、その子の特徴を言ったらすぐに行くと返答してきた。
「ありがとうございます。それと今何時かわかりますか?」
「うん。10時3分だよ」
「もう、一時間たってる。ヤバい、心配される」
彼女は焦ったように動き時間を確認した。俺はとっさに止めて
「ほらほら、動かない」
撫でながら落ち着かせた。撫でると静かになりまるで猫みたいだなと思った。
「君のことは宵たちから聞いてる。昨日夏河が話してくれたからね」
「今、由良って人が連れて来てくれるから」
と、悟が言った。
夏河がフードの被った女の子が来て千歳と幼馴染みとかって騒いでだからね。
「そうですか。ご迷惑おかけしました。」
俺たちは同時に首を振りながら「いえいえ」といった。あ、そうだ、自己紹介してないや。
「自己紹介してなかったね。俺は「salt」の組織副総長で2年寄神風斗。よろしくね。」
「僕は幹部で洗馬悟だよ。よろしく~!」
「あ、私は千輝ねおです。よろしくお願いします!」
「あ、そろそろかな?」
「「「ねお!!」」」
大きな音を立て焦ったように来た三人。
「ねお、ごめん。また、守れなかった。」
千歳は泣き声でねおちゃんを抱きしめた。
「大丈夫!ありがとう」
「また」ということは前にも同じことがあったのだろう。そこまで深く聞いたら悪いから俺は黙っておく。
「おい、誰にやられた?」
「そうだよ!ぶん殴ってくるから」
物騒なことを言う二人にねおちゃんは苦笑い。
「この三人の先輩が助けてくれたの」
千歳たちは頭を下げてくる。
「先輩方ありがとうございます」
「ねおを助けてくれて」
俺たちは微笑む。なんか安心した。
「いえ、これから双葉が手当てしてくれるって」
思い出したようにいうとねおちゃんがこちらを向いてきた。
「そうなんですか」
「にしてもここまではひどいね」
「ああ。千輝は千歳と幼馴染みか。俺らも守る」
そっと由良が微笑む。由良は基本笑わないから新鮮。まあ、確かに俺たちも手を打たなきゃだな。
「ありがとうございます」
「由良~自己紹介してないよー」
「ああ。俺は総長で五十嵐翠だ。よろしく」
やはり俺たちの総長は抜けてる。
「今回は助けてくださりありがとうございました!」
ねおちゃんは可愛らしい声でお礼を言う。

「由良~来たよ。」
「双葉か。来てくれありがとう」
「うーん。いいよ。ねおのためだしね」
ここは知り合いなんだと少し驚く。まあ、双葉が来てくれる時点でそうだろうなとは思った。
「えっ?知り合い?」
「初めて知った」
千歳でさえ知らないみたい。
「双葉くん、ごめんね」
「いーよ。俺にとってねおは大切だからね」
「てか、またかよ。気を付けろよ。心配するし」
双葉は極度の女の子嫌い。だからこそ笑いながら愛おしそうな目で見ていることに驚きが隠せなかった。
「うん、ありがとう」
みんなを見るととてつもなく驚いている。俺もいまいち状況が理解できていないしね。
「えっと、二人の関係は?」
「友達。よくご飯食べに行く」
「そうなんですか。」
「だね、双葉が笑ってるのも初めて見たしね」
「まあね」
双葉とねおちゃんの関係は思ったより深く心から大事に思っているんだなと思う。千歳は不安そうに口を動かした。
「あの、双葉さんねおは傷の跡とか残りませんか?」
「大丈夫。ねおは傷の回復早いから」
千歳はほっとしたした。ように微笑む。俺も安心だ。
「あ、ねおもしかして前に話していた人ってこと双葉さん?」
「そうだよ。双葉くんとは三年前からお世話になっている。の」
双葉郡の話をしたことはあるんだな。ってことは双葉が荒れていたときに関わっていたのはねおちゃんなんだ。三年前双葉は誰にも抑えられないほど荒れていた。でも突然黒髪にして真面目になったのだ。笑うことはないけれどね。
「そうだったんだ。あの時助けてくれたのは双葉さんだったんだ」
「あの時」ということは何かあったに違いない。
「さってとねおちゃん?説明してもらおうかな?」
低い声と真っ黒い笑顔をでねおちゃんに問い詰める。
「あはは。何のことかな?」
ねおちゃんはガクガクと震えながら笑う。
「あれだけ言ったよね?フード被っても油断するなって!」
圧のある声と共にねおちゃんは萎縮していった。その姿に思わず苦笑い。
「は、はい。すみませんでした」
「俺は学年も違うしいつでも守れる訳じゃないんだよ。千歳たちだって同じクラスだけど体育は違うし。だから自分をもっと大切にしなさい」
双葉は真面目に真剣にねおちゃんに話した。その姿に誰もが驚きを隠せない。双葉はそれくらい人興味がないからね。
「うん、ごめんなさい」
ねおちゃんが素直に謝ると双葉がねおちゃんを覆うように抱きしめた。
俺たちに聞こえないように耳元でしゃべる。双葉もねおちゃんも目を潤ませながら話をしていて相当過去になにかがあったのだろう。

そんな二人の姿を見ながらそっと俺らは離れる。