体育のときは女子と男子は別れるらしい。女子にうまく思われていない私は、浮いた存在。昔からなので何も思わないけどね。
「あいつ、千歳様とも仲がいいのよ」
「ほんと最悪。お姫様気分にでもなっているんじゃない?」
「図々しい」
これくらいなら大丈夫。言葉ならいくらでも言えるしね。
ただ、とてつもなく嫌な予感がする。
「この体育が終わった後、一人で体育館倉庫に来なさい」
ぶつかった時に耳元で言われた。少し怖くなっている。
女の子とはいえ何があるか分からない。



「あ、やっと来た。」
「なんでお前なんかが宵様たちといるの?ふざけんなよ」
「ほんと。対してかわいくてないくせに」
大人数で殴られ水をかけられる。ここで抵抗してもよりひどくなるだけだろう。
ただ私は、慣れているため何にも思わない。何も感じない。どんなに言われても殴られでも私は、ここで仲良くなった人と一緒にいたいから。
だか、体は限界。どんどん意識が薄れていく。フードも取れないから余計だろう。
「そこで何をしているの?」
「ほんと、その女の子ぐったりしているじゃん?」
「えっ、なんで「salt」の方々が?」
「ヤバい、カッコいい」
「それで、君らは何をしたの?」
「違います。勝手にその子が、、」
「言い訳するな、早く散れ」
「目障りだ」そういうと女の子たちは泣きながら去って行った。
「ねぇ?大丈夫?」
肩を触れられたが反応できるほどの気力は残っていなかった。
「由良ヤバいよ。手当てしないと」
「そうか。なら「salt」の部屋に行くぞ」
ほっとした瞬間私の意識は途切れた。


目が覚めると知らない部屋にいた。
「あ、目が覚めた?良かった」
知らない男の人が二人いた。
「大丈夫?水飲みな」
驚きが隠せなかった。でも、助かったみたい。
「あ、はい。わざわざすみません」
「いいよ。あんなに殴られたから痛かったでしょう?」
「いえ、大丈夫です。あ、あの、、ここはどこですか?」
少し動くと激痛が走る。
「すごい痛いね。ここは俺達の部屋だから安心して休んで。それに知り合いの手当てが上手な人が来るからもう少し待ってて」
「ありがとうございます。それと今何時かわかりますか?」
「うん。10時3分だよ」
「もう、一時間たってる。ヤバい、心配される」
でも動こうとしても傷のケアをしてないから痛みが強い。
「ほらほら、動かない」
撫でながら微笑んでくれた。
「君のことは宵たちから聞いてる。昨日夏河が話してくれたからね」
「今、由良って人が連れて来てくれるから」
そっか⁉️迷惑かけちゃったな。
「そうですか。ご迷惑おかけしました。」
二人の男性は微笑みながら「いえいえ」と言ってくれた。
「自己紹介してなかったね。俺は「salt」の組織副総長で2年寄神風斗。よろしくね。」
「僕は幹部で洗馬悟だよ。よろしく~!」
「あ、私は千輝ねおです。よろしくお願いします!」
「あ、そろそろかな?」
「「「ねお!!」」」
焦ったような声とともに私のところに来てくれた。
「ねお、ごめん。また、守れなかった。」
ちーくんが抱きしめてきた。
「大丈夫!ありがとう」
「おい、誰にやられた?」
「そうだよ!ぶん殴ってくるから」
物騒なことを言う二人に苦笑い。
「この三人の先輩が助けてくれたの」
「先輩方ありがとうございます」
「ねおを助けてくれて」
ちーくんはともかくこの二人まで心配してくれるとは思わなかった。改めて二人は優しい人だなと思った。
「いえ、これから双葉が手当てしてくれるって」
双葉くん?もしかしたら?
「そうなんですか」
「にしてもここまではひどいね」
「ああ。千輝は千歳と幼馴染みか。俺らも守る」
少し微笑んでくれた。
「ありがとうございます」
「由良~自己紹介してないよー」
「ああ。俺は総長で五十嵐翠だ。よろしく」
「今回は助けてくださりありがとうございました!」
お兄ちゃんさんみたいな寄神さん、可愛らしい洗馬さん、無口な五十嵐さん。この人たちには感謝しかない。

「由良~来たよ。
「双葉か。来てくれありがとう」
「うーん。いいよ。ねおのためだしね」
ここには知り合いが多くて驚く。
「えっ?知り合い?」
「初めて知った」
みんな驚く姿に私も驚く。
「双葉くん、ごめんね」
「いーよ。俺にとってねおは大切だからね」
「てか、またかよ。気を付けろよ。心配するし」
双葉くんはたまたま知り合った。そして仲良くなった。そのときも渡しが怪我をしていて手当てしてもらったのだ。
「うん、ありがとう」
双葉くんは微笑みながら撫でくれた。
「えっと、二人の関係は?」
「友達。よくご飯食べに行く」
「そうなんですか。」
「だね、双葉が笑ってるのも初めて見たしね」
「まあね」
ちーくんが複雑そうな顔でみていた。
「彼の、双葉さんねおは傷の跡とか残りませんか?」
悲しそうな声で聞いてきた。
「大丈夫。ねおは傷の回復早いから」
ほっとしたようにちーくんが微笑む。
「あ、ねおもしかして前に話していた人ってこと双葉さん?」
「そうだよ。双葉くんとは三年前からお世話になっている。の」
双葉くんには私がボロボロ苦笑いなったときに助けてくれた。
「そうだったんだ。あの時助けてくれたのは双葉さんだったんだ」
ちーくんは安心したように頭を撫でてくる。
ちーくんも結構会っていたけれど双葉くんも同じくらい会っていたのだ。
「さってとねおちゃん?説明してもらおうかな?」
真っ黒い笑顔をした双葉くんが私を見下ろした。
「あはは。何のことかな?」
私はとぼけながら双葉くんから目線を外した。
「あれだけ言ったよね?フード被っても油断するなって!」
そう、青原市場学園に行くことを双葉くんだけが知っていた。もちろんフードも知っている。ちーくんとは高校の話はしなかったから知らなかった。
「は、はい。すみませんでした」
「俺は学年も違うしいつでも守れる訳じゃないんだよ。千歳たちだって同じクラスだけど体育は違うし。だから自分をもっと大切にしなさい」
双葉くんはふざけずに真面目に話してくれた。
「うん、ごめんなさい」
双葉くんが私を抱きしめながらみんなに聞こえるか聞こえないくらいの震えた声で
「俺とてつもなく心配したんだよ。また、ねおが傷つけられたって聞いてどれだけ焦ったか」
私はまた、双葉くんに迷惑をかけた。双葉くんホントにごめんね。
「だから約束して。絶対に千歳たちから離れないこと。誰かを頼ること。約束してね?」
「うん、双葉くん、ありがとう」