今日突然編入生が来た。噂だから来ないかと思っていた。
いつも通り芹川先生が来てホームルームをする。この高校は学力のレベルが高くて編入生は来なかった。
「はじめまして。千輝ねおです。よろしくお願いします」
綺麗な心地の良い声と共にフードを被った女子生徒が来た。もちろん驚きはしたが、俺の友達にもフードを被ったやつがいるから何にも思わなかった。
「ねおの席は泉の隣な」
何より芹川先生のあんな柔らかい声初めて聞いた。この人もこんな声出るんだなと驚きが隠せなかった。それに女子生徒は俺達の後ろで隣は泉。女子たちの反感を食らうだろう。まぁ、そこしか席空いてないが
「えっ?泉様の隣があいつなの?」
「泉様が汚れちゃう」
「それに夏河様と宵様の後ろだよ」
「ホント最悪」
ほらすでに結構。編入生は特に何も思ってなさそうだか芹川先生は明らかに顔が歪んだ。俺も合格できたぐらいの成績を持つ編入生が少し気になる。夏河も興味津々。
「尚くん、泉くんはどこ?」
編入生が芹川先生を名前で呼んだ。俺もクラス全員が動揺をした。こいつは面白いと思った。
「ねおちゃん、ここだよ」
泉がありいつも通り張り付けた笑みですでに下の名前で呼んでいる。さすがだなと思いつつこいつは腹の中で悪魔を買っているんじゃないかと思うほど性格が恐ろしい。それに組織が違うからさほど仲良くない。

「ホームルーム終わり。一時間目は自習だから準備しとけよ」
いつものように終わる。芹川先生は俺らの暴走族の初代の人たがらみんな尊敬している。もちろん俺も。芹川先生がいなくなった後、すぐに泉は話しかけていた。
「初めまして。俺は桜庭泉。よろしく」
こいつは特に女からモテル。
「よろしくお願いします」
泉に丁寧に返す編入生。
「ねえねえ、ねおちゃんって芹川先生と知り合いなの?」
泉も気になっていたようだ。
「うん!私のお父さんさんの弟なんだよ」
「そうなんだ。あんなに柔らかい先生初めて見たよ」
芹川先生が柔らかい理由を知り納得した。

「ホントに編入生きたんだ。なあ、宵?」
急に喋りだしたと思ったら俺にも話しかけて来た。
「ああ。そうだな」
そう話していると編入生が俺達のの方を向いてきた。泉がすぐに前を向いたので夏河が話しかけた。
「頭がいいんだな?」
突然質問されて少し戸惑ってそうだったけど少し嬉しそうに見えた。
「ありがとう。勉強は好きだよ」
「そうなんだ。俺は全然勉強できねー」
「お前、まだ自己紹介してないだろ?」
俺はそう言いつつ夏河の頭を叩く。
よく編入生の顔を見ると口元しか見えなくて全く表情が見えなかった。夏河ははっとしたような表情で自己紹介をした。
「そうだった!俺は沢原夏河。よろしく~夏河って呼んで」
「俺は三輪宵。よろしく」
俺はそこまでしゃべるのが得意じゃあないからあっさりとした自己紹介になってしまう。こういう時は夏河と泉が羨ましく思う。
「よろしくお願いします!夏河くん、宵くん。私も好きなように呼んでね!」
やっぱり綺麗な声。俺はねおの声があまりにも心地がいい。
「おーい。泉ちょっと来て~」
「あ、呼ばれちゃった。ねおちゃんまた、しゃべろうね!」
泉はニコニコしながら去って行った。
夏河は簡単に編入生に質問する。
「なぁ、なんでフード被ってる?」
もしかしたら只なる事情があるかも知れないのに平然と聞いていた。いつもなら止めていたかも知れないが少し俺も気になっていた。
「自分もよく分からない。親戚の人に被るように言われまして」
ねおは苦笑いしながら答えていた。夏河は思い立ったように大きな声で
「そうなんだ。俺らの友達にもフード被っているやついるぞ、な、宵?」
「ああ、いつも寝てるけどな」
ねおは俺らの話にとても嬉しそう。
「そうなの?まだ、見てないかも」
声がさっきより落ち着いていて緊張がほどけてきたのだろう。
「ああ、千歳は学校が嫌いだから週に一回しか来ない。お前の隣の席が千歳が座っているところ」
千歳はほとんど寮にいる。あいついわくある幼なじみがこの街からいなくなってしまいつまらないそう。だから何を言っても来ないだろう。
俺はなんだか分からないけどねおとしゃべるのがとても嬉しかった。心地がよく不思議な感じだった。退屈な毎日だったが面白いことが起きそうだなと期待しながらねおが楽しく学校生活を送って欲しいなと柄にも合わないことを思ってしまう自分がいて恥ずかしくなった。