「ここが青原市場学園か」
私の目の前には高校とは思えないほどの綺麗なお城が建っている。本当にやっていけるのかと不安になる。高校1年生、千輝ねお。元々この町に住んでいたけれど、事情があって違う土地で暮らしていた。
だけど、今日からこの町に戻ってきて知り合いのいるこの高校に無事編入できる。ただ、この高校に馴染めるか不安だ。
それに私の目の前にはとてつもなく綺麗な顔をした男の人が立っている。ふわふわした髪に眼鏡をかけた高身長さん。
「初めて。千輝さん。ここの高校の副会長をしています。仙波由宇です。」
「は、初めまして」
「ふふ。そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ」
ふわりと笑うと本当に王子様みたいな人だった。少し緊張しながらも隣を歩く。仙波さんが遠慮がちに質問してきた。
「そのフードどうしたのですか?」
フード?あ、そうだった。
「実はこの高校に通いたいならフードを被りなさいと言われまして、」
思わず苦笑いをしてしまった。
「そうなのですか。なんか大変そうですね」
なんかすみませんと心で謝る。
「あの、この後どこに行くんですか?」
「理事長室ですよ。ちょうど着きました。」
「失礼します。編入の生徒を連れて来ました。」
理事長室に入るとある人がいた。
「あ、ご苦労様」
そう言うとその人は私に抱きついてきた。
「ねお~。会いたかったよ」
そう、ここの理事長は私のお父さんの弟。昔からの知り合い。フードもこの叔父さんが言ってきたのだ。
「秋くん、お久しぶりです」
「相変わらず可愛いな。あ、そうだお前の好きなお菓子もあるぞ」
私に甘い秋くん。お父さんと10年が離れていて私にとってお兄ちゃんみたいな人。
「お菓子!!ありがとう!」
気になって仙波さんの方を見ると呆然としていた。
「あの、理事長とはどのような関係ですか?」
「私の叔父なんです」
そう言うと納得したように頷いた。
「あ、担任呼ばなきゃ」
思いだしたようにはっとした秋くん。
「仙波、ここまで悪かったな」
「いえ、ねおさんまた、お話しましょうね」
少し微笑みながら仙波さんは理事長室を後にした。


「失礼するよ。ねお来た?」
そういって理事長室に来たのは秋くんの友達の尚だった。
「ねお、久しぶり。俺が担任するよ」
尚くんは昔からよく遊んでくれた人。今でも交流があるのだ。
「相変わらず可愛いな。フード被っても可愛いとかさすがだな」
「嘘でも嬉しいよ」
思わず苦笑いしてしまった。
「あ、そろそろ時間だ。ねお行くよ」
秋くんが抱き締めながら
「また、来てね~」
「うん!また、来るね!」
秋くんにも沢山迷惑かけちゃったし、なんか今度お礼しなきゃな!




「尚くん、私クラスどこ?あ、先生つけた方がいい?」
「クラスはSだ。別に先生はつけなくていいよ」
そういって頭を撫でてくれた。
「いいか、絶対にフードはとるなよ。まぁ、ウィッグ付けてるけど。お前のかわいさがばれたら襲われてしまうから」
そう、フードのほかにお父さんさんからの言いつけでウィッグをつけている。私の髪は人よりも目立つから念のためらしい。
「大げさだな~フード被っているから大丈夫なのに」
「まぁ、秋は心配性だからな」
俺もだけどなと言って微笑む尚くん。
「どうだ?久しぶりに家族と会えて」
「うん!毎日楽しいよ!ただ、お兄ちゃんが前よりも過保護になったけどね」
「だろうな。でもよかったよ」
尚くんは安心したように笑ってくれた。
「あ、そうだ。この高校には暴走族と生徒会が対立しているのは知っているよな?」
「えっ?なんのこと?」
「そうか、この高校は暴走族「salt」と生徒会「sugar」まぁ、生徒会はお前の兄も所属している。この2つは学校の絶対的中心人物。今、姫はいないが、お前が来たことによって皆が注目している。お前は可愛いから気をつけろよ」
暴走族、生徒会、姫全く話がわからない。まぁ、私には関係無いことだ。
「今、関係ないとか思ったろ?」
図星をつかれて驚きが隠せなかった。
「俺はお前に楽しく過ごして欲しい。今、話したことはそんなに深く受け止めなくていいからさ」
笑いながら頭を撫でてくる。やっぱり私の周りは過保護。
「お、ついたぞ。俺が呼んだら入れよ」
さっきまでざわざわしていた教室が尚くんが来たこと静まり返った。そういえば尚くんと秋くんはこの高校の暴走族に所属していたんだっけ?
「ねお入ってこい」
緊張するなっと思いつつ教室に足を入れた。教室を見渡すと男子の方が多く美男美女ばっかりだ。私この場所で浮くなと思いながら尚くんの隣にたった。
「初めまして、千輝ねおです。よろしくお願いします」
あまり歓迎はされてなさそうだ。まぁ、フード被ってるし
「じゃあねおの隣は泉だな」
泉くんの名前が出ると女子たちが騒ぎだした。
「えっ?泉様の隣があいつなの?」
「泉様が汚れちゃう」
「それに宵様と夏河様の後ろだよ」
「本当最悪」
隣の尚くんを見ると今にも爆発しそうだ。私は、そっと尚くんの腕を掴んで首をふった。
「尚くん、泉くんはどこ?」
私が尚くんと呼ぶとクラス全員が「「「尚くん!?」」」私は、なんで驚いているか分からなかった。
「泉~手を挙げろ」
「ねおちゃん~ここだよ」
泉くんが手を振りながら呼んでくれた。泉くんは爽やかでものすごくイケメンさんだ。
「ホームルームは終わりだ。一時間目は自主だから準備しとけよ」
尚くんはそれだけ言って教室からいなくなった。
「初めまして。俺は桜庭泉。よろしく~」
人懐っこい笑みに甘い声。この笑みだけで女の子を何人もおとしてきたのだろう。
「よろしくお願いします!」
「ねえねえ、ねおちゃんって芹川先生と知り合いなの?」
「うん!私のお父さんさんの弟なんだよ」
「そうなんだ。あんなに柔らかい先生初めて見たよ」
泉くんはニコニコしながら話してくれた。

「ホントに編入生きたんだ。なあ、宵?」
「ああ。そうだな」
急に声がするなと思ったら前の席の人だった。宵と呼ばれた人はマスクをつけていてクールそうな人。宵くんに話しかけた人は元気そうで金髪の人。
「頭がいいんだな?」
突然質問されて少し戸惑ったけど嬉しかった。
「ありがとう。勉強は好きだよ」
「そうなんだ。俺は全然勉強できねー」
「お前、まだ自己紹介してないだろ?」
宵くんが呆れたように頭を叩いた。
「そうだった!俺は沢原夏河。よろしく~夏河って呼んで」
「俺は三輪宵。よろしく」
「よろしくお願いします!夏河くん、宵くん。私も好きなように呼んでね!」
二人から見たら私の口元しかみえてないだろう。
「おーい。泉ちょっと来て~」
「あ、呼ばれちゃった。ねおちゃんまた、しゃべろうね!」
ニコニコしながら去って行った。
泉くんは夏河くんたちとあまり仲良くないんだろう。
「なぁ、なんでフード被ってる?」
「自分もよく分からない。親戚の人に被るように言われまして」
苦笑いしながら秋くんとお父さんを思い浮かべた。
「そうなんだ。俺らの友達にもフード被っているやついるぞ、な、宵?」
「ああ、いつも寝てるけどな」
「そうなの?まだ、見てないかも」
少し嬉しくなった。同じ仲間がいるんだな~
「ああ、千歳は学校が嫌いだから週に一回しか来ない。お前の隣の席が千歳が座っているところ」
千歳くん?私の幼なじみと同じ名前だ。もしかしたら会えるかも!
そんな期待に胸を膨らませていた。