誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと、義妹に押し付けられた~入替姉妹~

「侯爵夫人に気に入られれば、子爵の中でも一歩頭を出せる。流石私だ。お前も、私の言う通りにしていれば間違いないんだ」
 手紙を持つ手が震える。
 侯爵様の最後には『無理を言って、許してくださいね』と書かれていた。
 そして、紫のヒヤシンスの押し花がつけられている。
 もしかして……。
 ドクンと心臓が高鳴る。
 侯爵夫人の言う知り合いというのは……。ルード様?
「おい、聞いてるのか!」
 お父様が私の腕をつかんだ。
 しまった。聞いてなかった。
「すぐに刺繍をしろと言っているんだ。いいな、明日の朝にはお前が侯爵家に届けるんだ。失敗は許さん。さっさと取り掛かれ具図が!」
 ばたんとドアを閉めてお父様が出て行った。
 違うかもしれない。でも、もしかするとルード様の手に渡るハンカチ……。
 私が刺繍したハンカチをルード様が使ってくださるところを想像して胸が熱くなる。
「って、こうしちゃいられないわ。すぐに刺繍を始めないと!」
 裁縫道具を取り出す。
 この間買った刺繍糸はまだ残っている。それから……。1枚余分に買った薄紫のハンカチ。
「……ルード様に渡したいと思って、買ってしまったけれど……」
 刺繍をして女性が男性にハンカチを贈るなんて……。身内や婚約者以外に贈るのは特別な意味があると思われてしまう行為だ。
 してはいけないことだと、刺繍はせずに裁縫箱の中にしまっておいた。