誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと、義妹に押し付けられた~入替姉妹~

「私が、バレないように、協力してあげるよ」
 家令の手が肩から背中へと降りていく。
 ぞわりと気持ち悪さが背中に走る。
「協力は……必要ありませんっ。急ぎでハンカチに刺繍をしないといけないので失礼します」
 家令の手を振り払って逃げるように部屋を後にする。
 気持ち悪い。
 気持ちが……悪い。
 確かに、ヴァイオレッタとして結婚するなら経験がないとおかしいと思われるだろう。
 ……触れられただけであんなに気持ちが悪い。家令と関係を持つなんて絶対に無理だ。
 じゃあ、誰ならいいと言うの?
 ルード様の顔が浮かんだ。
 ……だめ。
 ”アイリーン”とルード様が関係を持ったなんて、そんな過去を作るわけにいかない。
 もし万が一、ルード様が”アイリーン”と関係を持ったことに責任を感じてしまったら?
 義妹のアイリーンがルード様と結婚することを想像して胸が痛む。
 私と結ばれることがないルード様だけど。誰かと仲睦まじく過ごす姿を近くで見ていたくはない。
 ……じゃあ、”ヴァイオレッタ”だったら?
 ルード様は噂は聞いたことがあるみたいだけれど、”ヴァイオレッタ”とは会ったことがないみたいだった。
 ヴァイオレッタとしてルード様に……。
 想像してから首を大きく横に振った。
 ルード様は不誠実な人ではない。
 馬鹿な想像に恥ずかしくなる。