誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと、義妹に押し付けられた~入替姉妹~

 お辞儀を返してダンスホールに一人で戻った。すぐにお父様の姿を見つけて近寄る。
「アイリーン、どこにいたのだ」
 お父様が声を潜めて私に話しかけた。
「知っている人になるべく合わないように、庭園にいました」
「誰にもバレてないだろうな?」
「はい」
「じゃあ、帰るぞ」
 馬車に乗り込んだとたんに、お父様はいつも屋敷で見る姿に変わった。
 不機嫌な顔で視線も合わさず私にキツイ言葉を吐く。
「あの男は一体誰だったんだ?」
 え?
「お父様もご存じないのですか?」
「知らん。知っていれば、皆にアイリーンお嬢様とご一緒の方は誰だと尋ねられても答えることができたんだ。まったく、答えられずに恥をかかされた。お前のせいで!」
「も、申し訳ありません」
 初めて舞踏会に行ったのだ。貴族の顏等知るはずもない。まして知り合いなどいるはずもない。
「公爵様にはルードと呼ばれておりました。砕けた口調で会話をしておりましたので……公爵様のご親族かと」
「ふん、なるほど。高位貴族なら顏を知ってる者もいるはずだ。順番を飛ばして挨拶できる立場なのに知ってる者がいないと思ったら、親族か。公爵家には分家も多いし、過去に公爵家と縁づいた家もしぶとく親族を名乗るからな。大方田舎の領地持ちに何代か前に婿入りか嫁入りした家の者だろうな」
 お父様がぶつぶつと独り言を言い出した。