誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと、義妹に押し付けられた~入替姉妹~

「い、いや。たくさんの薔薇を贈られているんじゃないかと思って。ダンスホールでも、男たちの視線を釘付けにしていただろう?」
 ルード様こそ、女性の視線を釘付けにしていた。
「そんなことは……」
 ルード様が私の髪をそっとひと房持ち上げた。
 視界にうつるのは、金色の髪。私の……カツラの……アイリーンの髪の色だ。
「アイリーンは、何色の薔薇を贈ってほしい?」
 ルード様の目が私の目をまっすぐ見ている。
 私がルード様から欲しい薔薇の色は……。
 答えられるはずがない。私が欲しい薔薇の色もアイリーンに贈る薔薇の色も。
「薔薇は……贈られるよりも、こうして一緒に見る方が好きです」
 今、一緒にいるこの時だけは、アイリーンではなくヴァイオレッタ……間違いなく私だ。
 それからしばらく二人で無言で薔薇園を進んだ。
「まぁ、あの花は何かしら?」
 芝生のように一面がピンクになっている。薔薇のように1輪1輪に派手さはないけれど、小さな花が絨毯のように広がってとてもかわいらしい。
「贈られるなら、こんな花がいいわ……」
 ふと漏らしたつぶやきに生垣から声が返ってきた。
「その花は贈り物には向いてない」
「え?どういうこと?」
 声のした方に顔を向けると、頭を下げたおじさんが立っていた。
「も、申し訳ありません。姿を見せる立場ではありませんが……どうにも花が心配で……」