誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと、義妹に押し付けられた~入替姉妹~

 私の手を取ると、走り出した。
 そして、人気のない屋敷の影に入ると自分の着ていた上着を脱いで私の肩にかけた。
「ドレスは破れて……あちこち汚れて血も……いったい、兄さんに何をされたの、アイリーン」
 怒っているような泣きそうになっているような顔で、青年が私を見た。
 目の色は、ルード様よりも少し青が強いんだ……顏は、ルード様よりも優しい感じ。
 と、思わずまじまじと顔を見てしまうと、同じようにルード様の弟もまじまじと私の顔を見た。★★
「誰、……アイリーンじゃない……」
 弟さんの口から洩れた言葉にぎょっとする。
「あ、あの……」
 なんでバレたの?
 とっさに頭に手をやる。
 カツラはずれてない。
 なのに、なぜ……?
 他の人は誰一人として気が付かなかったというのに……。
「もしかして、本物のヴァイオレット?」
「あっ」
 口を手で押さえて、それからその場を駆けだした。
 まずい、まずい。
 バレた。
 私がヴァイオレッタだということ……。
 どうしたらいいのか分からず逃げ出す。
 お茶会の場から。そして、お茶会の開かれている子爵家の屋敷から。
 気が付いたら街中にいた。
 人の目がこちらに向いている。
 ヴァイオレッタとしてお使いに行くときには向かない目だ。
 視線を落とすと、汚れたドレスのスカートが目に映る。
 そして、弟さんが貸してくれた上着が目に留まった。