誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと、義妹に押し付けられた~入替姉妹~

 ドアを開くと、ミリアがいた。
「買ってまいりました」
 刺繍糸を差し出すミリア。
「うわー、素敵ですね。白い刺繍糸を何に使うのかと思ってたんですよ。色のついた布のハンカチは初めて見ました。綺麗ですね。とってもかわいいです」
 机の上に置いた作りかけのハンカチに目を止めたようだ。
 目を輝かせてハンカチを褒めてくれる。
「ありがとう」
 ミリアにも刺繍してあげたい。
 ハンカチにはできない小さい布なら使っても怒られないかな。糸も少しなら使っても分からない?
 あ……。
 私、今まで何かしたいと思うことも、誰かに何かしてあげたいと思ったこともほとんどなかったけれど……。
 私は……ハンカチ1枚を贈る自由もないんだ。
 糸一つ、自分が自由にしていいものはない。買うお金もない。
 そして、日が昇ってから暮れるまで仕事をして、夜しか自由になる時間がないけれど、明かりのための蝋燭も自由にならないから……。刺繍をするための時間も……。今だと、刺繍をしたいと言えば、糸も蝋燭も手に入るけれど……。出来上がったものは私の自由にならないだろう。
 それが当たり前だったから、何とも思わなかったけれど。
「ああ、それから、これを」
 ミリアがポケットから手紙を出した。
 1つは簡単な封筒。もう一つは侯爵家らしい格式ある封筒に入っていた。