「これどうするんだよ。本当に、なんだったんだ……」



 誰のものともわからないトランクケースを勝手に押しつけて、意味深な言葉まで残して、自分はさっさと舞台が降りる――喰えないやつだと希石はため息をつく。



 ふいに思い出した、懐かしい匂いの源を。


 忘れないはずの、忘れた花の名を。



「なんで、忘れてたんだ……?」



 あの蝶の仕業か。




 それとも――――?





 浮上しては沈む記憶が告げるのは、終焉の始まり。