「だって、野愛は、野愛じゃん」
「うん、そうだよ。俺は、野愛」
わたしといるときは、彼は猫を被っていない。
この学院では絶対的な存在である野愛に刃向かう者なんて、命を捨てたようなもの。
崇められ、敬われ、畏れられる者。
野愛は、ただの男子高校生なのに、そんなふうに見られている。
そもそも、わたしは【皇帝】制度なんてしょうもないな、と思っている超少数派の人間だから、命も何も関係ない。
たまたま、いま話している彼が、【皇帝】だっただけ。
だから、野愛を特別な存在として見るフィルターはかかってないし、生意気なことを言ってるけれど、野愛は野愛として扱いたい。
「でも、たくさんのひとに笑顔振りまいてる野愛は、“みんなのノア様”でしょ」



