「野愛に呼ばれたから!仕方なく来たの!」
勘違いしないでよね。
自惚れないでよね。
会いたかったとか、そんなんじゃないんだもん。
ふんっと明後日の方向を向くわたしに、野愛はゆるりと口角をあげる。
「無視することだって出来たのに?」
「……そんなことしたら、あとで野愛に何されるかわかんない」
ほんっと、このひとは何をするかわからないんだもの。
「そこを、俺が【皇帝】だからって言わないところが瑠璃ちゃんだよなあ」
うれしそうに目を細める野愛を、軽く睨む。
どれだけ甘く接さられも、いまさらだ。
野愛の毒も、いじわるも、すべて拝借したわたしにとって、そんな甘さなんて通用しない。



