「あっは。そうかもね」
バイバイ、というふうに手を振られたけれど、わたしはぐぬぬぬと悔しい気持ちでいっぱいになる。
少し迷ったけれど、ここで無視するのはモヤモヤするから、……仕方なしだ。
ほんのちょっとだけ、見えるか見えないかぐらい下のほうで手を振りかえす。
それを見た野愛が、少し目を見開いたのがわかった。
彼の表情を見ていたら、自分でしたくせに急に恥ずかしくなる。
居ても立っても居られなくなって、くるっと踵を返して【帝国】を飛び出した。
「…………え、え? いまの瑠璃ちゃん、え、?」
「落ち着けノア。日本語話せてねえよ」
「俺死んでない? 可愛すぎて軽く逝きかけた」
「……怖いって」
その後、そんな会話をしていたとは知らずに。



