ノア様の愛のいじわる



ほら、こういうところだ。

さらっとわけのわからないことを言うくせに。

口角を上げて、楽しそうに笑う。


髪をかきあげ、少し落ちてくる前髪が艶っぽい。

仕草は優美で気品があるのに、どこか男の子を感じさせる。


ずるい、やっぱりずるい。


なんでこんなに、野愛しか見えなくなるんだろう。


「〜〜っわたし、野愛に泣かされるほど弱くないから!」


もうこの空間にいられない!

そう思って席を立ち、教室に戻ろうと重い扉の前まで小走りで行く。


部屋から飛び出そうとする瞬間、野愛はそれを阻止するかのように言葉を発した。


「強い女も悪くねえけど。瑠璃ちゃんの泣いてるとこ、見てみたい気もする」

「は?! なに、変態!!」


ありえない!!と勢いよく振り返ると、野愛は【皇帝】らしく、大きな椅子に座ってこちらに向かって優雅に手を振っていた。