「なんでもないっ!」
「そう? 俺からすれば、瑠璃ちゃんのほうが百倍ずるいと思うけどな」
「え、どこが?」
わたしが、……ずるい?
どういうことだろうと首を傾げるけれど、野愛ははぐらかすようにニコっと笑った。
「ないしょ」
少し悪戯っぽい笑みが、わたしの鼓動を早くさせる。
どきんっとうるさいくらいに心臓が高鳴って、動揺を隠すのに必死になる。
「野愛って、ほんとに意地悪っ」
「そうかもね。俺が意地悪したいなーって思うのは瑠璃ちゃんにだけじゃん?」
「〜〜なんで?!」
「さあ? 自分でもよくわかんねえ」
「なんなの、それ……」
掴めない。
野愛にはいくら手を伸ばしても、掴むという感覚を持てない。
どれだけ囲っても、するりと抜けてしまいそうな儚さがある。
そのくせ、甘くて苦い、毒牙がある。
まんまと魅了されているわたしは、野愛にとってその他大勢の女の子なのだろうか。



